【男主】涙でにじむ約束は Ⅲ (ページ38)

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ごまかしページ38

Aside

滝沢「オッケー、各自今の感覚忘れるなよ。
今日は解散！お疲れ」

全員「お疲れ様でした！」

なんとか稽古も無事に終わって、
帰り支度を整える。

気が抜けたのか、どっと疲れが押し寄せてきた。

すぐに動くには、あまりにもダルさと頭痛が
強かった。

A「あ、俺この後事務の人に呼ばれてるから
ちょっと残るね」

渡辺「珍しいな、なんかあったの？」

A「あんまり詳しく知らないけど
提出する書類で確認あるんだってさ」

適当なごまかしはうまくいったみたいで
誰もそれ以上突っ込んではこなかった。

お疲れ、また明日ね、なんて言葉を交わして
レッスン室には俺１人になった。

カバンからピルケースを取り出して
薬のシートに入った痛み止めの錠剤を
手に出した。

水で流し込んだ後に微かに残る苦味にも
もうすっかり慣れていた。

ソファーに身体を投げ出して
蛍光灯の眩しさを避けるように
腕で目を覆った。

エアコンの音だけが、低く響いている。

油断すれば深い眠りに落ちてしまいそうだった。

少し落ち着いたら帰らなきゃ。

そう自分に言い聞かせたときだった。

？？「Aくん……？」

すぐそばから、誰かが呼びかける声がした。

A「あれ、どしたの康二。忘れ物？」

目を覆っていた腕を避けて見えたのは
心配そうな康二の顔だった。