現実 ページ24
Aside
A「俺はっ……」
頭では、滝沢くんの言っていることは
本当によく分かる。
けどこれが本当に最後の
滝沢歌舞伎になるかもしれない。
どれだけ苦しくても、
どれだけ辛くても、
舞台に立ち続ける覚悟はある。
それを滝沢くんに伝えようと思ったときだった。
A「っ……！」
俺の目に入ったのは、
滝沢くんの手だった。
滝沢くんの手は何かを堪えるみたいに
ぎゅっと強く握りしめられていた。
震えていた。
俺は、また自分のことしか
考えられていなかった。
滝沢くんの判断は間違っていない。
誰よりも俺らのことを思ってくれて、
誰よりもファンのことを考えてくれて、
誰よりも全体のことを見据えてくれる人だから。
それがどれだけ苦しい決断でも
口に出さなきゃいけないんだ。
その決断をさせたのは、
紛れもない俺自身だ。
俺には、滝沢くんを責める資格なんて
１ミリもない。
むしろ、謝らなきゃいけないくらいだ。
俺が、尊敬するこの人をこれ以上
苦しめるわけにはいかない。
A「分かりました」
滝沢「…………！」
A「俺、今年の滝沢歌舞伎は降ります」
滝沢「……すまない」
A「だから、謝らないでくださいって。
俺が悪いんですから。
むしろこんなこと言わせて本当にすみません。
ただ……」
滝沢「ただ？」
A「ひとつだけ、頼みを聞いてもらえませんか？」
滝沢「何だ？」
A「それは────」
俺の言葉を聞いた滝沢くんの表情が
一気に変わった。
滝沢「それはAにとって辛いんじゃないか？」
A「それでもいいんです」
今の俺にできることは、
それだけだから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1398人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：くらげ
| 作成日時：2021年12月4日 19時
