痛みは一緒に ページ13
Aside
岩本「ちょっとは落ち着いたか？」
A「ごめん、もう大丈夫」
紙コップに入れたお茶を、
照が渡してくれた。
体に心地いい冷たさが染み渡った。
状況が大きく変わったわけじゃないのに、
心のもやが少し晴れた気がする。
岩本「身体の方は大丈夫なのか？」
A「うん、平気」
今日は本当に大丈夫なのに、
照は疑り深い顔をしていた。
A「本当だってば」
岩本「ならいいけど、
何か少しでも辛かったら言えよ？
身体の痛みは変わってやりたくても
できないけど、
心の痛みは一緒に抱えてやるから」
A「照……」
岩本「だから、そのためにも教えてほしい。
病気のことも、Aが苦しいと思ってることも」
A「……ありがとう」
照の言葉が、痛いくらいにありがたかった。
A「あ」
岩本「どうした？」
カバンの中に病気について書かれた冊子を
入れていたことを思い出した。
A「これさ、病院でもらったんだよ。
大切な人に伝えるときの手助けにしろって」
宮舘「ちゃんと人数分あるんだ」
A「本当に言わなきゃとは思ってたんだよ？
だから人数分もらって持ってたんだけど
行けない状況になっちゃったから」
佐久間「しかもあの日ふっかとやり合ったしね」
深澤「あれは……悪かった」
A「俺もごめん」
阿部「まぉあれのおかげでAの本心
聞けた気もするけどね。
こっちはめちゃくちゃ怖かったけど」
渡辺「ま、結果オーライじゃない？」
宮舘「お互い様ってことで終わりにしたら？」
A「そうだね」
深澤「そうするか」
困ったように笑うふっかと顔を見合わせた直後だった。
ラウ「っ…………」
ラウが冊子に皺が寄るくらいに強く、
手を握りしめたのが視界に入った。
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作者名：くらげ
| 作成日時：2021年12月4日 19時
