爆発 ページ44
阿部side
思考が追いつかなかった。
受け入れなきゃいけない気持ちと、
受け入れたくない気持ちのせいで
頭が真っ白になりそうだった。
ただこの場に立ち尽くしているだけで
今の俺には精一杯で、
何も言うことができなかった。
深澤「言ったって何も変わらないから
言いませんでした？ どうでもいいって？
ふざけんじゃねぇよっ……」
指の色が変わるくらい、
ふっかは手を強く握りしめていた。
深澤「俺らの気持ちも少しは考えてみろよ！！」
ふっかの声が病室に響いた。
A「はっ……おまえに何が分かんだよ」
Aが今までに見たことない
乾いた笑い方をしながら立ち上がった。
声をかける間もなく
Aがふっかに近づいたと思ったら、
聞こえてきた鈍い音。
深澤「つっ！！」
Aがふっかを殴り返したって理解したときには
２人がまたお互いを掴み合おうとしていた。
岩本「やめろふっか！！ 手出すのは違うだろ！」
阿部「Aも落ち着いて！！」
とっさに近くにいたAの体を押さえた。
気がつけばふっかも照に抱えられていた。
俺とはもう付き合いの長い同期のふっかとA。
ふっかもAも、最後に怒ったのがいつかなんて
思い出せないくらい怒らないのに。
ふっかが手を出すなんて信じられなかったし、
ましてAが殴り返すなんて夢にも思わなかった。
A「っざけんなよ……」
俺の腕の中で、Aの肩は震えていた。
A「俺らの気持ち考えろ……？
考えてないわけないだろ……」
深澤「は？」
A「だったらお前言えんのか！？
やっとここまで来れたんだぞ！？
どれだけ長かったかなんて、
お前が一番分かってんだろ！？
ようやくこれからだってときにっ……
近いうちに死にますなんて
メンバーに言えんのか！？」
みたことなかった。
こんなに声を荒げたところも、
こんなに感情を溢れさせたところも、
こんなに苦しそうなところも。
それなのに、俺は、なにもできない。
うつむいたAの頬を一筋の涙が伝った。
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作者名：くらげ
| 作成日時：2021年10月17日 6時
