悪い癖 ページ15
岩本side
大丈夫……だよな。
ほんの少し前まで、Aは頭まで
ブランケットに覆われていて、
その様子を見ることができなかった。
寝返りのときにブランケットがずれて
相変わらずの整った顔がようやく見えた。
さっきよりも顔色は良くなっていて
今は規則正しく胸が上下している。
それなのに、どうしてこんなに
胸がざわつくんだろう。
言いようのない不安に
包まれていたときだった。
部屋の扉が開く音がした。
阿部「おはよー」
岩本「おはよ」
深澤「あれ、１人？」
目黒「Aくんは？」
前仕事を終えてやってきたのは
阿部とふっかと目黒だった。
岩本「あそこで寝てる」
Aが寝てる方を指差した。
阿部「なんかあったの？」
岩本「振りの最終調整終わった後に
立ちくらみ起こしてさ」
深澤「え、大丈夫なの？」
岩本「すぐ歩けるくらいにはなってた。
Aも大丈夫だって言ってたんだけど
ちょっと前にも体調崩してただろ？
心配だから始まるまでは休ませた方が
いいと思ってさ」
目黒が眉間にシワを寄せたのが
分かった。
目黒「Aくんって、昔からあんな感じなの？」
岩本「あんな感じって？」
目黒「辛くても、苦しくても
弱音とか吐いてるとこ見たことないから。
歳の離れた俺たちが入ったから、
無理するようになったんじゃないかって」
深澤「目黒、それは絶対に違う」
阿部「俺も違うと思うよ」
２人がはっきり言い切った。
俺も、同じ気持ちだった。
深澤「それは目黒たちが入る前からだもん。
俺が出会ってから、ずっと変わらないよ」
阿部「いいところでもあるけど
直してほしいところでもあるんだけどね」
目黒「……そっか」
目黒はほんの少しだけほっとしたみたいに
笑ってみせた。
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作者名：くらげ
| 作成日時：2021年10月17日 6時
