自分に厳しい人だから ページ7
向井side
これ以上、Aくんの足をひっぱるわけには
いかへん。
本気でやって、バシッと決める。
それぐらいしか、今の俺らにできることは
ないから。
そもそも最初からそうしやな
あかんかってんけどな。
今の俺の気持ちを伝えると
みんな一気に目の色が変わったのが分かった。
今日までの短い期間の中でも、
みんな何回もAくんに助けてもらってたから。
その後、稽古が再開された。
スタッフさんも滝沢くんも
それからAくんも、通し終わった後
びっくりしたような表情を浮かべてた。
A「今の最高だったよ！
さっきとは比べものにならないくらい
良かったよ！」
Aくんが俺たちの方を見て
本当に嬉しそうに言ってくれた。
滝沢「俺もそう思う。
今の感覚、忘れるなよ」
最初からやればできたんや。
ついていくのに必死になってて、
それだけで満足した気になってた。
それじゃあかんかったのに。
そんな当たり前のことに
気づくのが遅すぎた自分が恥ずかしかった。
その後の稽古も、いつもよりスムーズに
進んでいった。
ときどきSnow Manのメンバーが
Aくんに心配そうに声をかけたりしてたけど
Aくんは最後までやりきった。
無事に終えた安心感と
拭い切られへん後悔が混ざって、
もやもやしながら帰り支度を整えてたときやった。
A「お疲れー」
私服に着替えたAくんが、
俺に声をかけてきた。
A「康二、ちょっとだけ時間もらっていい？」
向井「え、あ、はい」
そう言って、廊下に連れてこられた。
もしかしたら、仕事への向き合い方で
怒られるかもしらん。
なんで最初からせぇへんかってんって。
そう言われても、仕方ないよな。
覚悟してAくんの言葉を待った。
A「今日、迷惑かけちゃってごめんね」
向井「え……？」
それは、俺の予想とは全く違う言葉やった。
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作者名：くらげ
| 作成日時：2021年10月17日 6時
