【男主】涙でにじむ約束は (ページ41)

今日:11 hit、昨日:72 hit、合計:394,549 hit

パンフレットページ41

Aside

A「これは……？」

手のひらサイズの冊子の表紙には、
伝えられた病名が書かれていた。

中には病気の症状のこと、
原因や治療法が分かっていないこと、
それに、余命のことまでも分かりやすく
まとめられていた。

立花「ご自分の口から説明するのが
難しければ、まずこちらを伝えたい人に
読んでもらうということもできます。

絶対に伝えろとは言いません。

ただ、雪村さんが何かを抱えていることは
分かっているのに、
なにも話してもらえないのは
周りの人を悲しませる結果になりかねません」

言っても悲しませる。

言わなくても悲しませる。

そんなの、どうしろっていうんだよ。

みんなを悲しませるしかできない。

そんな俺に、存在価値なんて……。

そう言いたくなるのを
ぐっと堪えた。

こんな気持ち、先生にぶつけたって
なにも変わらないんだから。

立花「使う使わないは今は置いて、
何冊かお渡ししておきましょうか？」

A「……９冊、いただけると助かります。
多いですけど大丈夫ですか？」

立花「えぇ」

何でだろうな。

伝える覚悟もできてないのに、
この数字が出てきてしまうのは。

診察室でもらった９冊のパンフレット、

それと、前にもらったよりも
何倍にも種類の増えた薬を
カバンの中に押し込んで病院を出た。