【男主】涙でにじむ約束は (ページ32)

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恐怖ページ32

Aside

とんでもない隠し事をしてるのに、

昨日あんなことを言われたばかりなのに、

みんなが楽しそうにしているのを
見ているだけで安心した。

楽しくて、仕方なかった。

けど大きな秘密を抱えたままの
安心なんて、たった少しの時間で消えていく。

みんなの笑顔を奪うのが怖い。

ここからいなくなるなんて
どうやって言えばいいんだよ。

考えたくもないのに、
自分のいない未来が頭に浮かぶ。

今までにない、強くて速い心臓の鼓動を
痛いくらいに感じた。

怖くて、苦しくて、
こんな感情、消し去ってしまいたい。

深澤「A、大丈夫か？」

A「え……」

恐怖に押しつぶされそうになったとき
ふっかの小さな声がした。

そうだ、
今は収録中だ。

今の事情がどうであれ、
来た以上はちゃんと仕事はしないといけない。

集中しろ。自分。

A「大丈夫。ごめん」

引きつりそうになりながら
ふっかに笑ってみせた。

明らかに納得してなさそうなふっかから
逃げるみたいに、モニターへ視線を
移動させた。

スタッフ「はい、休憩挟みます！
楽屋でお待ち下さい！」

スタッフさんのカットがかかった瞬間
気が抜けて、気分の悪さが一気に襲ってきた。

さっきから治らない動悸に
締め付けられているみたいな頭痛。

どれも、病気の資料に書かれたものだった。

まだ、みんなに知られたくない。

もう少し、今のままの時間を
過ごさせてほしい。

深澤「A」

A「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」

ふっかは気付いてる。

何か言いかけたのを遮って、
俺はスタジオからトイレの個室に逃げ込んだ。