【男主】涙でにじむ約束は (ページ16)

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内緒だよページ16

ラウールside

ダンススタジオに向かって歩いていると
視線の先で誰かがうずくまっているのが
見えた。

え、大丈夫かな。

一瞬誰だか分からなかったけれど
駆け寄る途中に分かった。

ラウ「Aくん！？」

廊下の床に膝をついていたのは
Aくんだった。

手すりをつかんでなんとか倒れそうなのを
耐えている。

俺にはそう見えた。

A「つっ、ラウ……？」

Aくんの声じゃないみたいに、
苦しそうでかすれた声にどきりとした。

ラウ「大丈夫！？俺っ」

誰か呼んでくる、

そう言いかけて立ち上がった瞬間、
Aくんが俺の手をつかんだ。

伝わってきた温度があまりにも冷たくて
どきっとした。

A「待って……いい、から……」

ラウ「けど……！」

A「だいっ、じょうぶ……」

俺を見たAくんの顔は
見たことないくらいに真っ青で、
汗がにじんでいた。

ラウ「大丈夫なわけっ……」

スタッフさんでも、先輩でも、
この建物には助けてくれる人が
いっぱいいる。

誰でもいいから呼びに行きたかった。

けど、冷たいAくんの手が俺の腕を
つかんだままでそれを許してくれなかった。

何かを堪えるような呼吸の音だけが
怖いくらいに大きく聞こえる。

俺はただ、そばにいることしかできなかった。

どれくらいの間そうしてただろう。

Aくんが大きく息を吐いて
ゆっくり立ち上がった。

A「いやー、焦った焦った」

シャツで汗をぬぐいながら、
Aくんは笑ってた。