転生した少女は自己犠牲を厭わない【ONEPIECE】 (ページ13)

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第13話ページ13

⋈

宴が始まり、船の中は大騒ぎだ。
大きな男達が皆飲んで歌って楽しんでいるが、
私は初めての体験に気持ちが落ち着かない。

男達は皆私をチラチラ見るだけで寄ってはこない。
そりゃ記憶喪失なんて言われたらどう接したら良いか分かんないよね。

台に上がって芸をしたり、漫才をしたりする彼等を見て楽しそうだな…と1人思う。こっちを見ては何か言ってるみたいだけど、何を喋ってるのかな。

イゾウさんは隣に座ってお酒を飲んでいるが、私に気を使ってくれてるのかあまり話しかけてこないし、
私にとって気まずい時間が過ぎていく。

「お〜い！ちゃんと食べてるか？」

大きな声に驚いてその声の主を見る。リーゼントにコック帽…この世界の人らは何でこんな個性的な人ばっかなのか。

『え…っと、』

「記憶なくしたなんてなぁ…可哀想になぁ、オレサッチっていうんだよ。改めて宜しくな」

ニカッと笑ってその人はポンポンと頭に手を乗せてくる。
…この人の笑顔、好きだな。
ほわ、として口元が緩んだ。

そんなことを思っていると、先程まで遠くから様子見してた人達が一斉に寄ってきた。

元気出せよ！とかしたいことあったら言えよ！とか皆優しい声をかけてくれる。
ありがとうございます、と言って笑うと皆嬉しそうに笑ってくれた。

「やっぱりAは可愛いなぁ」
「記憶なんてなくても可愛いもんは可愛いなあ」
「笑った顔が1番だよAはな」

とか言ってくれる。
…中身全然別人なのにここまで私を可愛がってくれるなんて。ここに居た前の私が凄く羨ましい。
そういえば、前の私ってどんな感じだったんだろう。

「A全然食べてねぇなと思ってサンドウィッチ作って持ってきたからよ〜、ちゃんと食えよな」

考え込んでいると、サッチさんがサンドウィッチを私の前に置いてくれる。ハムとレタス、ふわふわの卵がたっぷり入ったサンドウィッチだ。

『わ、美味しそうすぎる…！』

思わず漏れた言葉にあっ、と思うが、恐る恐るサッチさんを見ると満面の笑みを見せていた。

「可愛いなぁAは〜！！いっぱい食って大きくなれよ！！」

髪がボサボサになるほど撫でた後、満足したのか去っていった。

たっぷり具の入ったサンドウィッチを持ち、口いっぱい頬張る。その瞬間広がる美味しさに顔も、張っていた気も全部ゆるくなった。

もぐもぐ口を動かして幸せそうに食べるAを皆微笑ましそうに見ていたが、本人は気づいていない。