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『龍也くん遅いね』
「いつもこんなもんだよ」
洗い物をしながらAちゃんが寂しそうにこぼす。
ご飯作ってくれたから洗い物くらいするって言ったのに、なかなか退かないから一緒にやることに。
甘やかされ慣れてないから、ちょっとくすぐったくて。
『てかさ、涼くん机の上に教科書開きっぱなしだったじゃん、勉強してたら?』
「……へへ、」
『勉強嫌いなのも龍也くんに似てるんだね……って、ことは成績もアレなの?』
痛いところを突かれて思わず押し黙る。
そんな様子を見て、わかる範囲になっちゃうけど、聞いていいからね、と水を止める。
どうやら、洗い物が終わったようだ。
「兄ちゃんにも勉強教えてたもんね」
『そうだよ、龍也くん酷いの、赤点ばっかでね……、』
同級生のAちゃんしか知り得ない情報。
龍也くん超おバカだったんだよ、と言いつつも兄ちゃんの話をするAちゃんは楽しそうで、
ああ、勝ち目なんてゼロなんだろうな、と改めて思い知らさせる。
そもそも同じ土俵にすら立ててないんだけど!
「ただいま〜!」
玄関から間延びした兄ちゃんの声が聞こえてくる。
二人っきりの時間はもうおしまい。
玄関先まで急いで向かって、兄ちゃんに抱きしめられてるAちゃんなんて見たくない。
「……部屋で勉強してるね、」
俺のつぶやきは二人には届かないだろう。
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作者名:アオ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=blueao5&scr=novel/jeyuto01...
作成日時:2019年6月17日 22時