純愛メランコリー【Ryo】 (ページ4)

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___『龍也くん、涼くん、お弁当忘れてる！』

パタパタと両手にお弁当を持って廊下を走るAちゃん。

あれ、と兄ちゃんと顔を合わせて思わず吹き出す。

『二人して忘れないでよ？』

「ありがと、A」

兄ちゃんが彼女の頭に手を乗せる。少しだけモヤッとしたけど気付かないフリ。

涼くんの前でヤメテ、と恥ずかしそうに、でも嬉しそうに頬を緩ませて、俺の方に視線を向ける。

『あ、涼くんネクタイゆるっゆるじゃん、ちゃんと締めて』

ネクタイをキュッと引っ張って、少し苦しくなる首元。それと同時に胸が締め付けられて苦しくなる。

こんなに近くに居るのに、手を伸ばせば触れられるのに、

「涼ちゃん行くよー」

「あ、うん、ちょ、待って」

『行ってらっしゃい』

行ってきます、と兄ちゃんと声を合わせて家を飛び出す。

誰かに見送られる朝はやっぱり、いいね。

「ねえ、兄ちゃん」

「ん？」

「Aちゃんのこと連れてきてくれてありがと」

きっとただ一緒に住みたかっただけじゃない、家族からの愛情をあまり受けずに生活してる俺のために、呼んでくれたってのもあるのだろう。

俺、馬鹿だけど兄ちゃんの優しさに対してだけは鋭いんだよ？

「ふふ、やっぱりいい子でしょ、A」

「うん、……本物のお姉ちゃんみたい」

だからその優しさを裏切らないように、想いに蓋をして。

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