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___『涼くんおはよ』
「Aちゃんおはよ……、あれ、兄ちゃんは?」
『会議の準備しなきゃ!ってバタバタ出てっちゃったよ』
Aちゃんは顔に出やすい。
すぐに、寂しいって顔をするんだもん。
俺ならそんな顔させないのに……、まあ、兄ちゃんと別れたら家を出て行ってしまうだろうけど。
何しろ、俺とAちゃんの間にハッピーエンドはきっと存在しないのだ。
『パンとご飯どちらにしますか』
「んー、じゃあパン!」
でもきっと、可愛い弟だってAちゃんの笑顔を作ることならできるはず。
Aちゃんの前では笑ってるから、笑ってよ。
『はーい、……実はパン焼いちゃってたんだけどね』
「俺がご飯って言ってたらどうするつもりだったの?」
『涼くんのことを信じてたので!』
なにそれ、と思わず吹き出すと、遅刻するから早く食べて!と俺を急かす。
食パンに半熟の目玉焼き、
正面にはAちゃんがいて。
幸せを噛み締めたいんだけど、意外とそんな余裕はなかった。
「はちじ、じゅうごふん……」
『今日はお弁当忘れないでね、あ……あと、教科書も!』
「ありがと!」
慌てて口に突っ込んで、鞄を持つ。
Aちゃんが入れてくれたから今日は忘れることもなく、
だけど、Aちゃんの方を向いて一時停止、
『もう、だからネクタイちゃんと結ばないと!』
わざと緩めてるんだよ、なんて、心の中で呟いて家を飛び出した。
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作者名:アオ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=blueao5&scr=novel/jeyuto01...
作成日時:2019年6月17日 22時