Hiding Words (ページ6)

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あれから少し経って、キュヒョンさんは宿舎へと帰った。
相変わらず、リョウクオッパは眠ったまま…。

私は、その横のディスクで翻訳された自分の本を眺めていた。
ペラペラめくって最後のページにいくと、ポストイットで何かメッセージが書かれていた。

ーーーAちゃんのデビュー作。甘酸っぱいくてどこかほろ苦い
もどかしい恋愛小説。この主人公の女の子、ちょっとAちゃんに似てる(笑)

Aちゃん、どこにいるの
元気でいるのかなーーー

「これって…」
他の冊子も確認してみると、同じようにポストイットにメッセージが書かれていた。
本の感想と私へのメッセージ。

「見られちゃったか…」
後ろから声がして、びっくりして振り向くと
寝起きのリョウクさんの姿があった。

「ごめんなさい…、私勝手に」
そう言うと、私の頭を撫でながら

「カッコ悪いじゃん、こんなメッセージ」
そう照れくさそうに言うリョウクさん。

彼のその姿を見ていると
なぜだか分からないけど、胸がキュッと苦しくなる。

「リョウクさんっ」
あの時の、リョウクさんへの気持ちを諦めようと
毎日、がむしゃらに仕事をしていた自分を思い出す。

まさか、彼への想いを全てぶつけた作品を
彼自身に見られていたなんて……。

「なんで泣いてんの？」
そう言って、私を抱き寄せる彼……。

「私、本に自分がなれたら良いなって未来を想像して
書いていたんです。リョウクさんと一緒に生きる未来を
本の中で叶えてもらおうと…」
会えないという絶望の中で、少しでもあなたと一緒にいれる
そんな幸せな空想にしがみつくしか出来なかったから…。

「馬鹿だな、Aちゃんは
今一緒にいるし、これからも一緒にいるでしょ」

そう言いながら、私を抱きしめて
頭を優しく撫でる彼。

「大好きです、リョウクさん…
もう何も言わずに絶対にいなくならないからっ
ずっと、私のそばにいて」

私は、彼の顔を見ながらそう言った。
その言葉に彼は、優しく笑いかけて

「Aちゃんが離してって言っても
離してやんないから」

そう意地悪に笑いながら
優しくキスをした。