サイレント・キス〔 Ryosuke.Y 〕

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慧｢え、俺ぇ？｣







寒そうにポケットに手を突っ込んだ慧ちゃんが、不満そうに唇を尖らせた。









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慧｢光誘えばいーじゃん｣








A｢聞いてみたけど、用事あるって、｣









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光｢涼介の文化祭？




…………っと、俺その日はバンドの練習入ってるわ…｣









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ぱちん、と申し訳なさそうに手を合わせた八乙女くんの表情が蘇る。







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慧｢だって迎え来てくれんでしょ？1人で行けばいーのに｣







A｢……まあ、そうなんだけど｣







1人で高校の文化祭に行くのって緊張するじゃん……！







A｢せっかく涼介くんが誘ってくれたから……行きたいの。



お願い｣









この通り。









頭を下げると、面倒臭そうに視線を逸らした慧ちゃんが


溜め息をひとつついて、口を開いた。









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慧｢サバ味噌。ご飯大盛りね｣





A｢え、｣







顔を上げると、口元で微笑んだ慧ちゃん。






慧｢今日の学食奢り！で、手を打ってやろう｣






A｢な………ズルい、｣





既に食堂へ足を向けた慧ちゃんが、楽しそうに振り返った。





慧｢もう高校生気分味わう事もないだろうからねぇ。



しょーがないから、行ってやる｣






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A｢ありがと……慧ちゃん、｣




慧｢うん、だからサバ味噌ね。




あー、可愛い女の子たくさんいっかなあ｣




A｢……何言ってんの、｣




頭の後ろで手を組んで、そうボヤく慧ちゃんの肩に軽くパンチしながら









今週末の小さな楽しみに、ワクワクと心を踊らせた。







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