36.あの日と同じ雨 ページ36
*
真っ暗な空には怪しい雲が覆っている。
腕時計を見ると23時半を回っていた。
最近まで取材を続けていた中央区の連続殺人事件。
その犯人と見られる人物の死体が東京湾から発見されたと聞きつけ、つい先程まで捜査関係者への夜回りに行っていた。
多分明日の一面はどこもこの記事になりそうだな…
取材報告を津川さんにメールをしてスマホの画面を消した。
駅まで歩くと、駅の周辺には人だかりが。
どうやら何らかの故障で区間全ての電車が一時停止しているらしい。
こんな時間に電車が止まれば、当然タクシーだって捕まらない。
(仕方ない……歩こう)
駅から踵を返して、雲行きが怪しい真っ暗闇を歩き始めた。
もしかして、雨降るんじゃ……
なんて、思った瞬間
案の定、見上げた顔にポツリと雨が落ちた。
明日から6月。関東は梅雨ラッシュだと今朝のテレビでやっていたっけ。
腕時計を見ると針がちょうど０時を指していた。
日付が変わって6月1日。
午前０時。
��あの日��と同じ雨が降る。
「………」
どうしてだろう。
なぜか日本橋へ向かう足。
シトシトと降り始めた雨
傘もささずに日本橋まで走った。
どうしてこんなことしているのかなんて
自分でもわからない。
ただ………
もしかしたらあの人に会えるかもしれない……
日本橋のど真ん中。
乱れる息を整える。
「………いるわけ、ないよね……」
午前０時過ぎ、橋を通り過ぎる人はいても
立ち止まる人は誰一人としていなかった。
明日も仕事なのに、私はこんなところで一体何しているんだろう。
待っていても、
彼が来るわけじゃないのに────。
しばらく空から降って来る雨をただ見つめていると、水が跳ねる足音が聞こえてきた。
思わず振り返るとフードを目深くかぶった見知らぬ男が立っていた。
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作者名：ぺんぎん | 作成日時：2018年5月22日 17時
