56 ページ8
.
いつも帰り道には保育園での出来事をたくさんお喋りして教えてくれるテヒョンも、今日は黙ってただ歩くだけだった。
ただ痛いほどに強く握られた手から、テヒョンの戸惑いと不安がひしひしと伝わってきていた。
「テテ、おいで」
部屋に入ってすぐ、瞳いっぱいに涙を溜めたテヒョンをぎゅっと抱きしめた。
何も言わずとも強く私の首に回された小さな腕に、胸が締め付けられる。
TH「まま、きょうは ぱぱのおたんじょうびだよね？」
「うん、そうだよ」
TH「そしたらぱぱ、おうちにかえってくる？」
「…っ」
TH「ててが4さいになったらあえる？おかたづけちゃんとしたらあえる？おやさいもぜんぶたべたらあえる？」
「テヒョンっ、」
込み上げる感情を堪えきれなくて、次々に頬に雫が伝っていく。
ジンくんにはもう二度と会えないこと、テヒョンにきちんと伝えたことはなかった。
まだよく理解できないかもしれないから、もう少し大きくなってからでもいいだろうなんて、そう考えていた。
だけど逆にそれが、テヒョンに寂しく辛い思いをさせていたことに今更気付くなんて。
TH「てていっぱいがんばるから、ぱぱにあいたい」
「っ」
TH「ててがおりこうさんじゃないから、ぱぱもホソクヒョンもあいにきてくれないの？」
そう言った途端、堰を切ったように涙をぽろぽろと流して泣き出すテヒョン。
ずっと結ばれていた口から溢れる大きな泣き声に、私はただただその小さな体を包みこむことしかできなかった。
ジンくんがテヒョンのパパだよ、そう言葉にするだけじゃ足りないこともきっと心のどこかで気付いていた。
だからテヒョンにとっては、きっとホソクくんがパパのような存在になっていたんだろう。
偶像でしかなかった父親という存在を、ホソクくんに重ねていたのかもしれない。
それなのに私は、自分勝手にホソクくんを突き放して、大好きだったホソクくんに会えなくなったテヒョンの気持ちすら見えていなかった。
「違うよテヒョン、ごめんね、ごめんねっ……」
どうやったらパパに会えるのと泣きじゃくるテヒョンに、何も返す言葉が浮かんでこなくて、ただごめんねと強く抱きしめることしかできない。
認めたくなくて、目を逸らしたくて、そうやってずっと逃げ続けていたせいで。
こんな私を好きだと言ってくれたホソクくんも、テヒョンも、結局私が傷付けてしまった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1128人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひなぴ〜 - このお話ものすごくキュンキュンするぅ！これからもガンバってください！ 応援してます！！ (2019年9月28日 22時) (
レス) id: 26489886b1 (このIDを非表示/違反報告)
haru(プロフ) - nanatyn27さん» お返事遅くなりすみません！！せっかくフォローして頂いたのに、何も更新していなくてごめんなさい（ ; ; ）フォローありがとうございます（ ; ; ） (2019年9月26日 13時) (レス) id: 88b5764800 (このIDを非表示/違反報告)
nanatyn27(プロフ) - 超今さらなんですが、このお話が急にすごく読みたくなったのでツイッターフォローさせていただきたいので許可お願い致します泣 @___tae178cm です！ (2019年9月22日 14時) (レス) id: 9661676326 (このIDを非表示/違反報告)
haru(プロフ) - 凛音さん» 全てが温かい凛音さまのコメント…ありがとうございます（ ; ; ）そういえば私、自分で書いときながら結婚まで2年くらい間があったことすっかり忘れてました（笑）貴重なご意見ありがとうございます(*^^*) (2019年7月26日 22時) (レス) id: 88b5764800 (このIDを非表示/違反報告)
haru(プロフ) - はおぺんさん» わあもったいないお言葉です……ありがとうございます（ ; ; ）私も3歳児テテお気に入りです（笑） (2019年7月26日 22時) (レス) id: 88b5764800 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：haru
| 作成日時：2019年3月12日 20時
