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HS「っ俺……どうしたらいいんだろ…」
誰かに答えを求めたわけではなく、ただ胸の内から溢れるままにその言葉がこぼれた。
俺とテヨンさんだけしかいない、しんとした店内にその声はやけに寂しく響いた。
諦められるのならもうとっくにそうしてる。
それが出来ないからこんなに苦しいんだ。
かといって、Aさんの中で俺の存在がジンさんを超えることはきっとないんだろう。
Aさんだってきっと、ジンさんではない他の誰かを好きになることを望んではいないような気がした。
TY「ホソクくん、Aちゃんのことお願いね」
え、と顔を上げると、眉を下げて優しい笑みを浮かべたテヨンさんと視線が合った。
TY「あの子、いつもニコニコ笑ってて弱音とか愚痴とか全然言わないの。だから余計心配なのよ。…きっと、Aちゃんの中ではジンくんが亡くなった日から時計が止まってる」
その言葉を聞いて、そういえば、と思い当たる節がいくつもあった。
今まで公園や帰り道会って話す時も、Aさんはそういうマイナスなことを言ったことがない。
ふとした瞬間にぽろりと弱音を吐きそうになっても、すぐに笑って何事もないように振舞っていた。
だからこそ、ジンさんがいなくなってから心に溜め続けた不安が、いつかダムが決壊するみたいに溢れ出してしまうんじゃないかというテヨンさんの心配もよく分かった。
HS「…でも、俺でいいんでしょうか」
俺はそんなに大切な誰かを失ったことがないから、Aさんの気持ち全てを理解することはきっと出来ない。
Aさんの時計を、無理に動かすことが正解なのか分からなかった。
TY「大丈夫よ。あなたの話をする時のAちゃん、すごく柔らかい表情をしてるの。たぶんあの子本人も無意識だと思うんだけどね」
今まであの子がジンくん以外の男の子のことを話すこと自体なかったんだから、とテヨンさんは笑う。
TY「ふふ、そんな難しい顔しないで。おばさんのお節介とでも思ってて」
いろんな感情が渦巻いて何も言えない俺の背中を、テヨンさんはぽんぽん、と優しく叩いた。
そんなテヨンさんにぎこちない笑みを返しながらも、Aさんへの行き場のない想いは増すばかりだった。
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haru(プロフ) - すーさん» そうなのですね(;o;)わたしはまだ独身のぺーぺーなのですが…そう言って頂けて嬉しいです。わたしもホソクくんめちゃくちゃ欲しいです!!笑 (2020年8月11日 9時) (レス) id: 88b5764800 (このIDを非表示/違反報告)
haru(プロフ) - 理緒さん» わーーすみませんコメントに気付いていなくてお返事が大変遅くなりました( ; ; )愛されるテテちゃんを意識して書いたのでそう言って頂けると嬉しいです(*^◯^*) (2020年8月11日 9時) (レス) id: 88b5764800 (このIDを非表示/違反報告)
すー(プロフ) - 私も一人親で、子供が寂しくないよいようにと、仮面ライダーショーとか、戦隊ショーに何度か連れて行ったの思い出して、思わず感情移入(ToT)あ〜私もホソクくん欲しかったぁ(笑) (2020年8月11日 2時) (レス) id: 794e25742d (このIDを非表示/違反報告)
理緒(プロフ) - テテが可愛すぎます!また作品楽しみにしていますね! (2020年5月31日 15時) (レス) id: 6939d6db70 (このIDを非表示/違反報告)
haru(プロフ) - かおすさん» そんな!恐縮です( ; ; )ありがとうございます!頑張ります( ; ; ) (2019年2月24日 23時) (レス) id: 88b5764800 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:haru | 作成日時:2019年2月13日 20時