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「A、先輩どうだった？」
「話せた？」
朝、2人の友達が詰め寄ってきた。
『名前聞けたし、今日のお昼も約束取り付けてきた』
私が自慢げにそう話すと、「うわーくそ順調じゃん」「脈アリ脈アリ〜」と真顔で言われた。脈アリは気が早すぎる。
『ふふっ、絶対彼女になってやる！』
「おー、がんば」
スマホを触りながら、脇あたりまでの巻いた髪を弄っているのがユキ。
「年上彼氏か〜、いいね〜」
ふわふわした雰囲気だけど、一番腹黒いのがアヤネ。2人とも陸上部仲間だ。
ユキの方は彼氏持ち。アヤネは最近フラれたらしい。まだ中一のくせに彼氏がいたことがあるのが不思議だ。
⚪︎
『松野先輩？？？』
「…風並？」
土曜日、出かけている時に真っ黒の服を着た松野先輩を見つけた。
しかも、喧嘩をしたらしき痕跡がある。周りに数人の男の人が倒れていて、返り血も付いている。
奥には松野先輩よりも少しガタイのいい人もいた。
『えっ、先輩……えっ？』
いきなりの情報量に、頭が追いつかない。
「あー…これは………運動、してたんだ」
『いやいや、嘘ですよね？』
分かりやすい嘘だ。……嘘なのか？
『マジかー。先輩がヤンキーだったなんてー。』
「…悪かったな」
『まー、知ってたんですけどねー』
「………え？」
松野先輩がキョトンとしている。可愛い。抱きたい。
『知らずに付き合ってくださいなんて言いませんよぉー…』
いやでも、まさか喧嘩現場を目撃することになるとは。ははは
『とりあえず、松野先輩が喧嘩してる事は知ってるんで、付き合いましょ？』
「ごめん、それは無理」
『えー………』
「えー…じゃねえっ！」
『じゃあ結婚します？』
「それもしねぇよ」
付き合いも、結婚もしないと先輩に言われたが、私は諦めるつもりはない。だって好きだもん。早く彼女になって先輩に触れたい。松野先輩の隣にいたい。
んはー、好き。
「おい千冬ぅ、何やってんだ」
「あっ、すみません！今行きます！」
奥の上司らしき人に呼ばれ、「じゃあな」と言ってから行ってしまった。
いやー素晴らしかった。
去り際に揺れる髪の毛。動揺した目。うわっ、全部好き。
今すぐ裸になって踊り出せるくらいには。
…………裸は盛った。
ん？あそこに美味しそうなクレープ屋がある。
行ってみよ。
◯
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作者名：kabi | 作成日時：2021年12月27日 12時
