【文スト】その幼女、実は______

出来ない事 ページ16

「何故だ……何故異能を使えない！」

判らなかった

何故異能を使えないの？

私は必死に風に呼びかける

でも、風は動かない

自然に動く風と人

なんで……

また、鞭で打たれた

「昨夜此奴の元に行った奴がいるのか！？」

そう聞かれて遠くであの女性が手を上げた

「私が」

「何をした」

「食事を与えました。彼女は人間です」

ニンゲン

私は人間

「それに子供です！子供にこう言うことを強要為る方が可笑しい！」

そう言われて私の何かが心の中で動いた

「貴様ッ」

何時も私に向かう手が女性の方へ向かった

私は、女性の前に立って庇った

「な……」

「……ちゃんとします。これからはちゃんとします。だからこの人を殴らないで」

そういえばまた殴られて蹴られた

「機械だから感情を持たないと思っていたのに！何故人間の様に行動する！」

そう言われて私の何かが学習した

「……指示を、命令を、それ以外は何もしません」

自分で自分の感情を捨てた

“ニンゲン”であるのを捨てた

そうした方が皆幸せ

なのに……太宰様と中原様は変な人だ

何故？

私は感情を持つことはいけない事ではないの？

普通ってなんですか？

貴方達はなんでそんなに良くしてくれるんですか？

「それは辛かったね」

そう言って目の前の太宰様は私を真っ直ぐ見る

真っ直ぐ見る目は、あの女性と似ていて、優しい

「……手前は我慢してたんだな。此処に来たなら我慢しないでいいんだぜ」

そう言って中原様は私の頭を撫でる

なんでニンゲン扱いをしてくれるんだろう

私が人間だと主張すれば研究者達は嘲笑ったのに

彼等は悲しそうに私を見る

「私は……」

感情を持って人間の様に振る舞っても良いのだろうか

何故彼女は私を逃してくれたんだろう

その考えは全く出なかった

これまで沢山解いてきたどんな問題よりも難しくて解けない問題だった

難問解読→←過去

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す