第ニ十八話【機会と暗躍】 ページ8
喫茶店がある通りは、高級ブランド店や有名なホテル街がある所だった。今日は休日だった為か、人通りが多く、特に子ども連れの家族が多かった。
「此処ね......」
私達はある建物の前に辿り着いた。
「えっと此処は......ホテル?」
「先程のアクィラ・ファミリアの話は覚えていますか?」
「は、はい。確かその首領が来日していると......」
「アクィラは欧州のほとんどの企業を傘下に収めていた。その一つでこのホテルもアクィラの一端に過ぎない。お忍びで来るなら、出来るだけ自分の息がかかった所の方が安全なのでしょう」
「もしかして、此処にその首領が泊まっているの?」
鏡花が私に訊いた。
「えぇ、私の読み通りであれば、今もこのホテルの中にいる筈です」
私は静かにホテルの見ていた。
「Aさんは、ただマフィアの首領がホテルに泊まっているから見物に来たわけじゃないですよね?どうして此処に?」
敦が私に訊いた。私はホテルから視線を外し、敦の顔を見た。
「欧州のマフィアの首領ともなれば、殺 したいと思う人間の数に限りがない。どれだけ殺 す機会を伺っていても、本拠地で護衛が多い中では殺 す機会は早々あるものじゃない。来日した後は表立った行動は控え、殆ど外に出るより、中で引き篭もる時間の方が多いのかもしれません。でも今......その好機が回ってきた。何故なら、アクィラの首領は天城会との会合で、この場所を動かなければいけない。今まで隠れていた首領がやっと外に出る......それが何を意味するのか分かりますか?」
「えっと......それは......」
その問いに敦が言い淀んだ。それに反し、鏡花が顔をハッとさせた。
「もしかして......」
「鏡花ちゃんなら気付きますね。マフィアにいたのも伊達じゃなかったようですね」
「あれ......?どうしてAさんが鏡花ちゃんがマフィアにいたって知っているんですか?僕達、教えてないですよね......?」
敦がそのように言うと秋田は真意が読めないような顔をした。しかし、その目はまるで全てを見透かしているような異質さがあった。
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作者名:トキハル | 作成日時:2019年11月17日 14時