第ニ十七話【マフィアにいる理由】 ページ7
「そういえば、Aさんってどうしてマフィアに入ったんですか?」
その問いに思わず、私は珈琲を飲む手を止めた。
「えっ......いや......変な質問してたらすみません。ただちょっと気になって......」
今までそんな事、振り返ったこともなかった。だから、少し自分でも驚いてしまった。私がマフィアに入ったのも、確か......
「始まりは五年くらい前ですかね?私はポートマフィアの首領に拾われたんです。後はまぁ、色々あって今に至るんですけどね。しかし......今の生活も慣れてしまえば何ともありません。これが私の運命なら受け入れていますからね」
私は少し諦めたような顔をした。何故なら、私の居場所は此処しか存在しないからだ。実質、過去は変えられず、現状も選ぶ事もできない。日々、上から来る命令をただ遂行するだけ。私は常にそうやって生きてきた。もし、誰かに今の生活を満足しているかと聞かれたら......私は何と答えるだろう。
そんな事を考えていると、少し空気がしんみりとしているように思えた。自分でも身の上話をするんじゃなかったと今更ながら後悔した。何とか状況も変えないかと考えた末に、「そうだ。今度は私が質問してもいいですか?」と二人に言った。
「は、はい。僕達で答えられるのなら......」
「それなら、お二人から見て此方の私は幸せそうですか?」
その問いに敦と鏡花は顔を合わし、再び私に顔を向けた。そして、コクンッと頷いた。
「そう......それは良かったです......」
それから数分後......私達は食事を終えた。
「Aさん、ご馳走さまでした」
敦と鏡花の顔には満足そうな笑みがあった。
「それで、この後はどうしますか?」
私はチラリと窓の外を見た。丁度目を向けた時、外に黒い大型のワゴン車が通り過ぎて行った。ただその一瞬の間に車の窓ガラスは遮光フィルムが貼ってあるのが見えたが、中の様子は分からなかった。私は車が見えなくなった後も、目で追っていた。
「確かにそろそろ時間ですね」
それから、私達はお会計を済ませてから、店の外に出た。
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作者名:トキハル | 作成日時:2019年11月17日 14時