第六十五話【秘められた真実】 ページ45
数日後......
宅配会社から探偵社へ届く筈だった荷物が事故の火災により焼失してしまったという連絡が来た。元々匿名で送られたもので、送り主とも連絡が取れず、今では誰が何の為に送ったのかさえ分からなかった。
「箱の中に大事な物が入ってたらどうしましょか?」
私からの電話の報告を聞いた敦は、不安げになりながら云った。確かに、依頼人からの重要な品が事故の火災によって焼失したならば、例え探偵社の責任でなくても顔向けできない。しかし......
「大丈夫だと思いますよ」
私はそう静かに答えた。
「どうしてですか?」
荷物が焼失してしまったのに、問題がないとはどういうことなのだろうかと敦が私に聞き返した。
「だって......最初から何も入っていなかったんですから......」
箱の中身をただ一人知っていた私だからこそ言える言葉だった。荷物が届かないことで、入れ替わりの事件は起きない。私は無意識のまま小さく笑った。
そんな私の様子を見た敦は首を傾げた。
そして、あの黒いワンボックスカーを調べてみると盗難車であると分かった。焼失した車の中を調べていると多くの銃火器や爆薬の残骸が出てきた。それが爆発の原因として大きく関与していた。この車は何処かへ武器を輸送していのたか、若しくは何処かで事件を起こそうとしていたのか、痛ましい事故だったが、事故が起こったお陰で事件は未然に防がれた。それが......何とも言えない心境だった。
事件が落ち着いた頃、私は手帳に挟まっていたメモを思い出し、手帳を開いた。そして、メモに目を向けた。そこには......
"知る事は罪となし、知らぬ事も又罪となす"
見覚えのない文だった。なら、このメモは向こうの私が書き残したのだろう。
何故、時が戻ったのかは分からない。しかし、何故か向こうの私がやったのだという確信があった。ならばこの事実は墓場まで持って行こう。この誰も知らない秘密を。誰もこの事実を知らないと言うのなら、初めから無かった事にすれば良い。知らない事の方が幸せという事を。
私は手帳を閉じ、胸ポケットにしまった。真実は胸の中に収められ、二度と表に出る事はなかった。
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作者名:トキハル | 作成日時:2019年11月17日 14時