第四十六話【嘘か真か】 ページ26
ガチャ......
そこに事務所の扉が開いた。
「ただいま戻りました」
事務所へ入って来たのは秋田だった。
「Aさん。 おかえりなさい。一体何処に行って......「おいA」
敦が秋田を出迎えようとした時、すかさず国木田が眉間に皺を寄せながら秋田に詰め寄った。
「"探偵社に迷惑をかけるな"と言ったばかりだろう？勝手にいなくなり、余計な真似はしていないだろうな？」
国木田はそう言ってにらみを利かせた。
「えぇ、何もしていませんよ。ただ、今のヨコハマを見て回りたかっただけですから」
「本当だろうな？」
「はい。嘘をついているように見えます？」
秋田は真っ直ぐ国木田の目を見た。再び国木田が口を開こうすると、
「まぁまぁ、ちゃんと戻って来たんだから、いいじゃないか」
太宰が国木田と秋田の間に割って入った。それにより、国木田の口から出そうになった言葉が引っこまれた。
「ハァ......秋田、次はないからな」
「はい。心得ております」
prrrr......
そこに事務所の電話が鳴った。国木田は電話の応対をする為にその場を離れた。
「Aさん、今のは危なかったですね」と敦がこっそりと秋田に話し掛けた。
「何の事ですか？」
秋田はわからないように首を傾げた。
「国木田さんは、予定や規律を乱す人を何よりも嫌う人ですから。何時も何かあれば国木田さんの怒号が飛び交いますよ」
敦の脳裏には相手にとやかく言葉を浴びせる国木田の姿が浮かんでいた。彼に一度捕まれば、いつ解放されるかも分からない。加えて機嫌が悪い時は、特に酷い。
「それなら、次は気をつけないといけませんね」
秋田はそう言って小さく笑った。
「あれ？服に葉っぱがついてる」
ふと、鏡花が秋田の外套に付いている植物の葉を見つけると、それを手に取った。敦は鏡花が手に持つ葉を見ていた。葉の形から広葉樹のものだと推測した。
「葉っぱが付いているという事は......公園にでも行ったんですか？」
敦が秋田に訊いた。
「おや？推理ですか？」
「えぇ......いや、ただ......」
「まぁ、そんな所ですよ」
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作者名：トキハル | 作成日時：2019年11月17日 14時
