第三十二話【信じていた姿】 ページ12
【敦side】
「アンタの目的は何なんだ......」
武装兵のリーダーが声を震わせながら、Aさんに言った。
「目的......?私がやることは罪を犯した者への断罪......何たって私は裏では死神という通り名が付いているらしいですからね。だからといって、簡単には殺 しませんよ。だって、殺 してしまったら事件は闇に葬られてしまいますからね」
「な、何者だ?お前は......」
「私は、ポート......いえ、今は武装探偵社の一員らしいですよ」
Aさんはそう言ってチラリと僕達を見た。そしてすぐにその視線を目の前の男に戻した。
「とにかく、もう終わりです。大人しく罰を受けてください」
Aさんはそう言うと、自分の親指を首に当てた。
「やめろ......!何をするんだ......!」
Aさんは男の声にも耳を持たず、自身の親指を横に振った。同時に死神の鎌が男の首を切った。切られる瞬間、男の断末魔が響き渡った。そして、男の体は気を失ったかのようにその場に倒れた。
周りに静寂が訪れた。
しかし、男が倒れた後も男の断末魔が耳に残っていた感覚があった。その光景を見ていた誰もが絶句し、呼吸さえするのを忘れていた。
そして、僕の体は震えていた。
それは隣にいる鏡花ちゃんも同じだった。だって、Aさんは何時も優しくて、さっきだって僕達がケーキを食べている様子を嬉しそうに見ていた。しかし、今のは何だ?見ている光景が信じられなかった。自分の信じていたAさんの姿とずっとかけ離れていた存在がそこにあった。
いや、違う......
此方側のAさんと目の前にいるAさんは違うんだ。例え、名前も容姿も同じでもその本質が......
全然違う......
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作者名:トキハル | 作成日時:2019年11月17日 14時