【5】 ページ36
.
翌日にはソウルに戻った。
前と同じように、Aが手配したひとり寂しくタクシーに乗って。
一人で空港に来ることなんてのが、まず無い。
メンバーか、マネージャーか
旅行するときだって弟が一緒なのに
彼女に会えたその分のツケみたいに、きっちり寂しさがすぐのし掛かってくる。
DH「イェソンシ。おかえり〜」
LT「お、どこ行ってた？」
「実家」
HC「お前ホント好きだな、実家」
日常に嫌ってぐらい引き戻すケラケラと賑やかなリビングを抜けて、自室に籠ろうとすると
リョウクがするりと一緒に入ってきた。
「何」
RW「冷たっ…ヒョンこそなに？
Aに優しさ全部あげちゃったの？」
「………」
詮索を受けないように、小さくまとめた1泊用の荷物 ー 普段のボストンバッグを適当にデスクの上に投げた。
RW「楽しかった？」
「ちょっと一人にしてくれ」
RW「ふーん……ケンカでもしたの？」
「違うけど、今は話したくない」
RW「……ヒョン、いい知らせがあるみたいだよ」
いい知らせ。
僕にとってのそれはソロデビューか、日本での何かか
そのどっちかしかない。
まさか、な。
リョウクがそれを告げた翌日、
事務所に呼び出されたのはまさかのその両方で
ソロデビューと日本でのツアーをやるということだった。
辛くも本土でのライブではなく、より人気がある日本でということらしい。
願ってもない。
不幸ぶってはいけないけれど、イェソンだからと優遇されたこともない。
縁とタイミング。
中にははっきり言う人もいて、お前は不遇だと。見てられない、悔しいとも。
その度に色んな気持ちがないまぜになって、いつも最後は噛み殺してきた。
でも、僕の音楽人生で、命懸けで手に入れたチャンス。
笑いながら涙が静かに流れるのを止められなかった。
一番最初に知らせたのは母さん、
その次にAだった。
電話口で「わぁっ」と声を上げて喜んでくれた。
僕が同じ日本で過ごせるかもしれないことに触れても
ごくごく理性的に、入れ違いでソウルに戻る可能性が高いことと
それでも事務所が判断して何かサポートが出来るなら全力でやりたいと言ってくれた。
一つのことしか出来ない僕の妨げにならないように。
わざわざそんな言葉を口にはしない、
決して浮かれない、彼女の強さは変わらずに感じる。
そんな春の嵐の中の、僕の人生で忘れられない一日がまた増えたようだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 285人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「K-POP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みぃ(プロフ) - ドキドキしながらお話読ませていただいてます^^めっちゃ情景が浮かびます★続きも楽しみにしていますー^^ (2020年7月13日 7時) (
レス) id: 8a20d7ee05 (このIDを非表示/違反報告)
フェデリカ(プロフ) - アキナさん» ありがとうございます！！嬉しいです。2ヶ月も空いてしまっているのに、温かいコメント本当にありがとうございます！！昨日ちょうど4章の一話目を書き始めたので、今週からアップできればと思っています(^^)また遊びに来てください、お待ちしていますー！☆ (2020年6月22日 16時) (レス) id: bd4e4c346d (このIDを非表示/違反報告)
アキナ(プロフ) - こんばんは ひっそりとファンで読ませて頂いております。お忙しいことと思いますが、更新楽しみにしております☆ (2020年6月21日 22時) (レス) id: e981ced4a9 (このIDを非表示/違反報告)
フェデリカ(プロフ) - お変わりないようで安心しました！コロナで楽しみが少なく暇しております(笑)フィクションではHappyにイェソンさんも読者さんもめためたに幸せにしたい…！兄さんのひたむきなSNS更新が私も励みになっています。manmaruuさんも安全第一でお過ごしくださいねー！ (2020年4月3日 14時) (レス) id: 31c6de7297 (このIDを非表示/違反報告)
manmaruu(プロフ) - こんばんは！一話読む毎に本当に心が満たされて、フェデリカさんのおかげで免疫が上がっていると自信を持って言えます！！本編も深いお話もどちらも幸せな気持ちが湧き上がり大大大好きです(#^.^#)お忙しい中更新してくだり心より感謝しておりますー！！ (2020年3月31日 22時) (レス) id: 80fab98ded (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：フェデリカ | 作成日時：2019年7月15日 17時
