赤毛の少年に拾われたっ！件 (ページ13)

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第4話ページ13

少年はうっすらと笑みを浮かべていた。
どうやって狩るかその手順を思案する。

(一人一人は問題ない)

その人数の多さが野盗のやっかいなところだった。
しかし、その命の危機にも少年は最高のスリルと快感を得ている。
自分を含めて盤上のゲームの如く高揚した。

(...あの男、一人か...好都合)

最初の獲物となる人物を見つけ、手近にある石を取る。
少年の筋力では投石での致命傷は難しい。
気配を消し、最大限近づき、相手の後頭部を狙う。

(まず一人)

頭蓋骨の砕ける音、鉄の臭い、そのどれにも少年は顔色ひとつ変えない。
数回殴ったあと、こと切れた男の体からロープとナイフを拝借する。
そして岩場を上り少し高いところから様子を伺うと、単独行動をしているのが2人、2人組が1組、残り6人が離れたところでかたまっているのをみつけた。
初めに単独行動をしていた2人。

(うん、やっぱりナイフがあると簡単だ)

不意打ちによる一刺し。

(さて、2組はどうしたものか...)

自分ができること、この環境、それを活かした戦術。
頭の中で繰り返すシミュレーション。
その結果「まぁ、死なない程度に生き残れる」、そう判断をし少年は次の標的達へと向かった。
それから少年と野盗の戦いの数時間後、Aの意識がさめた。

「ん、ん～...？」

もう見慣れたぼろぼろの天井。
朝の出来事が夢かのような静けさと赤く傾き始めた夕日。
しかし、そこに少年の姿はない。

「っまさか！」

なぜ自分が家で寝ていたのかはわからないが急いで外へと駆け少年を探す。
すると見つけたのはひたすらに人だったものばかり。

「な、んだ...これ...」

赤い赤い惨状。
だが、そこに少年の形は見えずほっと息つく。
もしかしたら近くで、怪我をして動けないのかもと辺りを探すが少年はいなかった。
暗くなり少年が戻っているかもしれないと家に帰るが、誰の姿もない。

『お帰りA』

少年の声が聞こえたような気がした。

「あそこにっ！少年の姿はなかった！ならっ、ならっ...！！」

生きているはずなんだ。
いつものように笑っているはずなんだ。

──「そうだ、明日少年に見せたいものがあるんだ」──

ふと、昨日の会話を思い出す。

──「へ～なら明日は早めに帰ってこないとね」──

──「おう、待ってるから」──

扉を背に座りこむ。

「...早く帰ってくるんじゃないのかよ...ヒソカ」

少年の名前を読んでも返事はない。
その日、少年は帰ってこなかった。