。 ページ15
青年はプリンを娯楽と称した。
確かに甘味として食べるプリンに栄養価は求めていないわけだから間違いではない。
しかし、正しくもない。
「お客様、こちらのプリンに使用している蜂蜜はカスタネアクレナータの花より採れたものです」
「カスタネアクレナータ...栗？」
「えぇ、お詳しいですね」
「何かの本で読んだだけですよ」
「では花言葉はご存じですか？」
「いや、そこまでは」
青年は大袈裟に肩をすくめる。
栗の花言葉は「贅沢」「豪奢」「満足」。
「ものによっては栗は高級な食材として取引されています」
つまり栗は贅沢品、嗜好品の一つ。
ではなぜ、人は栗を、栄養関係なく「美味しいもの」を好むのか。
贅沢は悪いことではない、贅沢は心を潤わせ充足を与える。
充足があることで、人はそれまでを、これからを生きていける。
だから人は余剰を良しとし、贅沢品、嗜好品を好む。
「というのは私の持論でございます」
「心の充足...面白い考え方だな」
「ありがとうございます。ではごゆっくり」
「待ってくれ」
カウンターに戻ろうと背を向けると、声に引き留められる。
「今日ここに来たのは以前から噂を聞いていたのと、ある人物の紹介でね」
やはり、彼がヒソカの言う人物か。
「貴方がこの店の店長、Aだな？」
「はい、その通りでございます」
「俺にここを紹介した人物は、えらく貴方のことを気に入っているみたいでな」
「さようでございましたか、それは光栄です」
「誰かは聞かないのか？」
「お客様のプライベートに当店は一切関知致しませんので」
深々と頭を下げ営業スマイルを浮かべる。
さて彼の目的は何か、と言うかそもそも誰だ。
「そうか、まぁいいだろう、ここを紹介したのはヒソカだ。彼はここの常連客らしいな」
「ヒソカ様のご紹介でしたか」
「もともと噂は知っていたが、きっと俺もAに興味持つだろうと言われてね」
あいつ、絶対面白がっているな。
「奴の言う通りと言うのは少し癪だが、確かに貴方は面白い」
「恐れ入ります」
同感。
あいつの思い通りにことが進むのは確かに癪だ。
「...ふむ、ヒソカも言っていたが貴方は男か？それとも女なのか？
「見ての通りでございます」
「それは困ったな、なら男性と思っておこう」
「はい、それでは仕事に戻らせていただきます」
カウンターには入り、珈琲とミルクティを準備する。
そして本のページを捲るあの青年の席へ置いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 291人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユ - お、面白すぎる、、、！貴方様は物語を考える天才ですか！？ (2022年9月26日 16時) (
レス) @page31 id: ab3a56c6fc (このIDを非表示/違反報告)
むちょ - 言葉では表せられないぐらいとても素敵な小説でした！なんとも言えない空気感がとても好きです。 (2022年8月19日 1時) (レス) @page31 id: cded16a817 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - でぶきさん» コメントありがとうございます。 (2022年8月1日 20時) (レス) id: 8eeddf36f5 (このIDを非表示/違反報告)
でぶき - あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ (2022年6月26日 12時) (レス) @page28 id: 804c35253a (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - ユウさん» そう言って頂けて嬉しいです。しかし、ごめんなさい、まだ完結していません。長く更新していないのでたぶん誰かが完結してるとしてしまったんだと思います。今は別の作品を進めているところです。またしばらくしたら更新していく予定です。 (2019年11月29日 0時) (レス) id: 8eeddf36f5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：００ | 作成日時：2019年6月9日 0時
