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クリスマスツリーの蜂蜜 ページ2

扉に設置されたベルが開閉と共に店内に響く。
かつんっとタイルを踏むヒールの音は、常連客の一人のものだとすぐわかった。


「いらっしゃいませ、ヒソカ様」

「やぁA」


鮮烈な赤い髪、おどけた笑み、ピエロのごとき化粧。
常連客でありここに来て初めて知り合った人物だ。
曖昧な”記憶にあった彼”よりは少しまともに感じる。


「ん〜今日は少し甘めで頼もうかな」

「承りました、どうぞこちらの席へ」


彼が勧めたカウンター席につくと私は紅茶の準備を始めた。
珈琲派の彼だが、この店で頼むのは決まって紅茶だ。


「やっぱり店での貴方はずいぶんと他人行儀だね」

「来店時はお客様ですから」


私の返答に彼はつまらないといいたげに視線を逸らす。
そんな彼の目の前にティーセットのプレートを置いた。


「どうぞ、ダージリンとクリスマスツリーの蜂蜜です。お好みでミルクをお入れください」

「へぇ、クリスマスツリーの...」


ヒソカはルビー色の蜂蜜が詰まった小瓶を持ち上げ、光に透かすように興味深げに見ている。


「キャラメルのような濃厚で甘い味わいでございまず」

「そうなんだ、いただくよ」


赤い水色のダージリンに赤い蜂蜜が注がれ混ざりあう。
そのカップを持ち上げ口に運ぶ仕草はとても優美に映る。


「ん、美味しい」

「恐れ入ります」

「それで、ね。今日はちょっとした要望があるんだ」

「はい、どのようなご要望でしょうか」

「そろそろ貴方の性別くらい知りたいなって」

「当店ではそのようなサービスはお受け致しかねます」


彼の”要望”を聞くなり素早くお断りさせてもらった。


「ヒソカ様、ご来店の度にそのご質問を承っていますが?」

「だって貴方は出会った時から見た目は変わらず、それ以前のことも教えてくれない。性別すら不明、ただひとつわかっているのはAという名前だけ」


そのようだ。
ここに来てから確かに年を取るという変化が見られないのは誰より自分が驚いている。
最初にであって色々とお世話にもなった彼が“知っているのは名前だけ“というのにも理由があるが、それはまた別の時に話すとしよう。


「貴方は昔から秘密主義だ」

「性別についてはお答えしないだけで隠してはおりませんよ?」

「イヤな人だ...」


男性的ではないが女性的でもない、どちらとも言い切れない中性的な容姿だと自覚はある。

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作者名:00 | 作成日時:2019年6月8日 21時

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