始まりはEndRoleから (ページ33)

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Ep32「戦慄LastStage2」ページ33

一戦、一戦トーナメントが進んでいく。
その中にはヒソカの試合もあり、彼の試合をAは顔を青くしながら見ていた。
そしてもう一人他の観衆とは違う様相で見ていたのがギタラクルもといイルミ。

「(何だ？ヒソカにしてはずいぶん手緩い...？)」

ヒソカの戦いに疑問が浮かぶ。
ヒソカなら失格になっても相手を殺すか、そうじゃなくても再起不能な半殺しにしても可笑しくない、と。

「(彼女の目を気にしているのか？)」

いつもの気まぐれか、本気でほだされたのか。
イルミはやはり感情なんて不要だと改めて感じていた。
しかし同時にじりじりと胸元で不快感が燻る。
本に囲まれた部屋でククルーマウンテンの話をした夜を思い出した。
まっすぐにこちらを見上げるAの瞳は自分と同じ真っ黒なはずなのにキラキラと輝くように見える。

「(...俺も、か...)」

あまりにもAが自分達に「普通」に接することで、彼女の前で暗殺者としての自分を見せることへ抵抗が生まれてしまっていたことに気づいた。
暗殺者だと知らないからこその彼女の振るまいと知りながらも、失いたくない、知られたくないと思い始めていた。

「(ざまぁ無いね...やっぱり、こういった感情は妨げになるな)」

イルミは他人の試合を無感情に眺めながら、自分にとっての「大切」を思い直す。
ゾルディック家。
仕事。
家族。
弟のキルア。

「(そうだ、それが俺の大切な”物”、俺が欲しいもの、他のものは必要ない)」

イルミの試合の番が来る。
Aはヒソカを送り出したときのように、心配そうにイルミを見ていた。
ヒソカには悪いが(と、特に思ってもないが)素性が露見しようがかまわない。

「やぁ、キル」

言葉を放つ毎に、視界の端でAの表情が変わるのが見える。

｢心置きなく忠告出来る｡お前はハンターに向かないよ｣

不安から驚きへ、そして戸惑い。

｢影を糧に動くお前が唯一喜びを抱くのは人の死に触れた時｣

あとはもう見なくてもわかる。
イルミはキルアへと話ながら頭の片隅で最後に見たAの笑顔を思い出す。
おそらくもう自分に笑いかけることはなく彼女の笑顔を見ることはないだろう、と。

｢殺し屋に友達なんていらない､邪魔なだけだから｣

彼女の反応が他の一般人(ただそこにいるだけの存在)と同じになるだけだ。

｢お前に友達を作る資格はない｡必要もない｣

そしてステージを降りた時、何か言いたげなAの横をイルミはなにも言わず通り過ぎていった。