Ep31「戦慄LastStage1」 ページ32
最終試験の説明がされた。
私が挑戦できる回数は2回。
403番と191番の敗けたどちらかに勝つか、そのあと左のトーナメントで敗けた誰かに勝つか。
そもそも戦うってどうしたら良いのだろうか...。
喧嘩なんて、それも成人男性を相手になど普通に考えて無理だ。
「(これは....困ったねぇ。彼女の手助けができないなぁ)」
「...ヒソカさん、この試験って1年に一回なんですよね？」
「うん」
「今、私が持てる唯一の身分証ですか？」
「...そうだね、君が望む形で手にはいる唯一の身分証だと思うよ」
その言葉で腑に落ちた。
たぶんヒソカさんはこの試験以外にも身分証を発行する方法を知っている。
しかしきっと正攻法じゃない。
一般的な戸籍もない、特殊技巧もない、倫理を侵したくない、そして時間をかけるわけにもいかないという条件を満たすのがこの試験だけ、といっている。
「(なら...どうにかするしかないっ)」
「(おや？ふーん、くっくっく...A、君、本当にイイ子だよ)」
考えればなんとかなる、そう思った。
しかし、1戦目が始まり恐怖した。
子供が殴られ、蹴られる様に。
「な、に、これ...？ゃめ...」
「駄目だよA。君には辛いだろうけど、堪えて」
思わず止めに入ろうとする私の腕をヒソカさんに捕まれる。
「ひそか、さん、こんなの、ダメ、です...止めない、と...」
「A、これがハンター試験なんだ(やっぱりAは暴力に対する抵抗が強い...)」
「これが...？」
目の前の行為は私からすれば異常としか言えない。
私の常識ではこれを受容できない。
子供が数時間殴られ、蹴られ続け、腕を折られる光景に恐怖と嫌悪感で息苦しくなる。
「落ちついてA。ゆっくり呼吸するんだ...」
「ぁ...」
ヒソカさんが私の視界を手のひらで遮った。
耳元でゆっくりと話すヒソカさんの声に少し落ち着く。
これが、ハンター試験。
これが、この世界。
「...すみません、もう大丈夫です」
視界を覆っていたヒソカさんの手を自ら放す。
きっと今まで気づかなかったのは今みたいにヒソカさんが、ずっと私の目に触れないようにしてくれてたんだろう。
怖い。
目の前の出来事も、この後自分もやらなければいけないと言うことも。
「無理しないでね」
私の手をヒソカさんが握る。
するとヒソカさんの手が熱く感じるほど私の手が冷たくなっていることに気づいた。
「...いえ、無理してでも見ないと、舞台にすら上がれないので」
Ep32「戦慄LastStage2」→←Ep30「4.5Moment」
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作者名：００ | 作成日時：2019年5月25日 12時
