Ep21「走るFirstStage」 ページ22
最初は問題なく進んでいたが少しずつ加速し、限界のきた私はヒソカさんに抱えられていた。
「ヒソカさん、あの、大丈夫ですか？」
「うん、大丈夫」
「そ、そうですか」
私の心拍は大丈夫ではないんです。
まさか大人になってお姫様だっこをされることになるとは。
恥ずかしさのあまり両手で顔を隠す。
「だめだよ、ちゃんと僕に捕まっていないと危ないでしょ？」
指の間から見上げたヒソカさんは楽しそうに笑っている。
「つかまるって...」
「わかるだろう？」
この体勢で捕まると言えば、彼の首に腕を回すしかない。
「無理言わないでください」
「そんなこと言ってると落ちてしまうよ？」
「え、っ？！」
私を支える腕が緩められ、不安定な感覚に咄嗟にしがみつく。
すると、耳元で彼の笑い声が聞こえる。
「そうそう、そうやってずっと僕に捕まっていてね」
「...恥ずか死にそうです」
「おや、それは困るなぁ。じゃあ暫くは目を瞑っていると良い」
「...はい」
ヒソカさんの言葉に従い瞼を下ろした。
(甘い、香り)
視覚の代わりに嗅覚が働き彼の柔らかな甘い香りが鼻孔をくすぐる。
地面を蹴る規則的な振動と甘い香りが合間ってだんだんと意識が溶かされていく。
そして次に目を開けたとき、私は霧がかる森にいた。
「っ？！」
私は立ち上がり辺りを見渡すとヒソカさんがこちらに歩いてくる。
よく見ると、いや、よく見なくても彼は肩に人を担いでいた。
「ヒソカさん、あのここって、試験は、その人は？！？！？」
「落ち着いてA、まだ試験の途中だよ。ここはあのトンネルを抜けた先」
「あ、すみません、目を開けたら急に知らないところだったので驚いて」
目を開けたら知らない場所だったというのは一度で十分だ。
「それで、その人は？」
「彼は.........倒れてたから拾ったんだ」
...ヒソカさんには拾い癖があるのだろうか。
「だから次の試験会場まで運んであげようと思ってさ」
「そうなんですね、やっぱりヒソカさんは優しいです」
「君がそういうのなら、そうかもしれないね。ただあと少し会場まで距離があるんだけど走れそうかい？」
「はい、もう大丈夫です」
「...君も本当に良い子だね」
足元の悪い湿地帯を走り出す。
「ヒソカさんに、会場までの道がわかるんですか？」
「心配しなくても大丈夫だよ。持つべきものは仲間ってね」
「イルミさんですか？そういえば姿を見ないですね」
「...君は見ない方がいいよ」
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作者名：００ | 作成日時：2019年5月25日 12時
