Ep10「漂うNostalgia」 ページ11
あれから数日の間は彼の家でのんびりと過ごさせてもらっていた。
ハンター文字というものを覚え、最近は半日以上本を読み耽っている。
そしてわかったことがある。
自分がいたところと、今いるところは本当によく似ていた。
(これ、日本童話...)
ヒソカさんの言っていたジャポン。
たぶんそこが私の世界で言う日本と言う位置なのだろう。
今私がいる書斎には各国の様々な本が並べられていて、今の私には情報収集と文字の練習として最高の場所だ。
「A、そろそろ夕御飯だよ」
「あ、ヒソカさん。もうそんな時間でしたか、すみません」
ヒソカさんが開いたドアの前で呆れたようこちらをみていた。
「キミ、少し本に集中しすぎだよ。お昼食べてないだろう？」
「そういえば、すみません明日食べます」
ヒソカさんは昼間はどこかに出かけることが多い。
その時はお昼ご飯を作ってくれるのだが、本を読んでいて食べ忘れてしまうことがある。
居候のみでご飯を作ってもらっていながら申し訳ない。
「それは別にいいんだけどね、ちゃんと食べないと体調を崩すよ」
「はい、気を付けます」
「ふっ、キミの「気を付ける」はあまりあてにならなそうだ...ふふっ」
「ヒソカさん？」
「ごめんね、キミと似たような人が知り合いにいたなって思い出して、ふっ、今度キミにも紹介するよ」
わからないが、ヒソカさんは何かがツボったらしく、笑いを堪えている。
でも、似ているのなら、もし、その人と本当に出会うことがあったら仲良くなれるかもしれない。
私についていろいろヒソカさんに話したが、ヒソカさんはあまりそういう話しはしない。
まだまだ謎が多いヒソカさんだが、彼の交流関係を少し知れて嬉しい。
ヒソカさんの知り合いなら、きっとその人も優しい良い人なのだろう。
「今日のメニューはジャポン風だよ」
「え？」
「キミはジャポンでなくても、その周辺が出身なんだろう？なら懐かしい料理もあるかなって」
「あ、ありがとうございますっ」
最初は胡散臭さもあった微笑みだが、何かと世話を焼いてくれるヒソカさんを私はすっかり信用している。
ヒソカさんにとって私はペットのような感覚かもしれないが、それでも優しさに違いない。
「そうだ、明日うちに来客がある。キミのことを紹介したいんだけど良いかい？」
「はい、ヒソカさんが良ければ」
「良かった。それじゃあ食べようか」
食卓に並ぶ料理は、少し懐かしい匂いがした。
Ep11「最悪Encounter」→←Ep9「ドーナツMeeting」
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作者名：００ | 作成日時：2019年5月25日 12時
