Ep29「狩るForthStage4」 ページ30
足音もなく気配もなく黒い影が、息を潜める男の背後に忍び寄る。
イルミは相手が死んだと気づく間もなく一息で仕留めた。
もう一人もイルミの手刀によって致命傷を与えられる。
「た、頼むっ、死に行く私の最後の頼みを聞いてほしいっ...!」
「...何?」
「この試験でずっと私はヒソカと一線交えたかった。頼むっ」
Aのことを考えれば早急に対処すべきだが、イルミの悪い癖が出る。
相手をいたぶる、悪い癖。
「へ〜お前、運が良いなぁ...うん、良いよ、いきないよ。この先にいるから」
イルミはこのあといったん合流しようとヒソカの居場所を把握していた。
男はふらふらとした足取りでイルミが教えた方に歩き出す。
「俺も、運が良いなぁ」
最初に殺した男がAの、今の男がイルミのプレートを持っていた。
これで二人はポイントクリアとなる。
「ギタラクルさん!ここにいたんですね」
(カタカタ)
「こんなに取れたので一緒に食べませんか?」
彼女は服の裾を腕で支えながらその中にこぼれ落ちそうなほどの野苺を抱えていた。
どう見ても欲張りすぎだとイルミは呆れる。
「カタカタカタ」
「え、ヒソカさんと合流するんですか?...嬉しい...」
最後の言葉はとても小さく、彼女自身、口にしたことを気づいてないような囁きだった。
「(ヒソカと合流することがそんな嬉しいのか?...何かムカつくなぁ)」
イルミは何となく不快感を感じつつ彼女をつれてヒソカのもとに向かうと、まだ決着はついておらず風を切る槍音が聞こえる。
「カタカタカタカタ」
「わかりました。ここで待ってます。」
ヤル気のないヒソカに変わってトドメを刺して死体を森の中に放った。
「それで、彼女は?」
「バレるようなへまはしないよ。今はその奥で待ってもらってる」
森の中で手持ちぶさたにしている彼女にヒソカと合流できたことを伝えると瞳をキラキラと輝かせる。
その瞬間、イルミには彼女の褐色の瞳が木洩れ日に反射し赤く煌めいて見えた。
「(キル...?)」
彼の中でその瞳の煌めきが弟のものと重なる。
昔見た、自分とは違う紺碧の瞳が喜びからキラキラと輝いた様と。
その瞳が特別だと感じていたが、自分と似た色の瞳のAも同じように見えることに驚くと同時に、
「(これ、俺のものにできないかなぁ)」
それが堪らなく欲しいと思った。
ヒソカと合流し嬉しそうに野苺を頬張るAから───沸き上がる支配欲から───目が離せない。
Ep30「4.5Moment」→←Ep28「狩るForthStage3」
121人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:00 | 作成日時:2019年5月25日 12時