43 ページ43
数日後の体育の時間。
やはり、話し合いの続きのため、皆制服のまま、柏手が話していくのを聞いていた。
「次、応援合戦の練習タイムだ。応援団長夜陣に場を預ける。
頼んだ」
「応援団長に勝手に決められたのか。
まあ、いい。
今回オレが夜鍋して作った応援歌はこれだ!」
バーンと譜面をかざす夜陣。
「応援歌たりとて他クラスには負けられんから派手な曲にした」
一斉に配られた譜面を覗き込むクラスメートたち。
「おいおい、オレたちほとんど譜面読めないんだから解説してくれないと……
ってええ?!」
「えええ?!!」
騒然とし始める一同。
「譜面読めなくても分かるぜ!!
この曲はひとりじゃ誰にも歌えない!」
「でも、大勢なら歌えるな。
そういう人との協力が必要だという教えが込められているんじゃないのか?」
夜陣は首を横に振った。
「違うな。
個人プレーのオレがそんな気持ち悪いもの込めるか。
歌えるやつ、いるんだよなー。
この中に、ひとり……」
「だぁれ?
歌姫せいかちゃん?」
「はは、せいかに歌えるなら、オレだって逆立ちして歌えるさ」
せいかは夜陣のあまりの言いようにむくれた。
「もうー、そりゃ、無理だけど。
そうやって、挑発するの良くないと思うな、夜陣くん」
せいかは黙ってうつむいているレーレの方を見ている夜陣に言った。
レーレは何のことか分からない、という顔をしていた。
放課後。
DTM部の部室でレーレはキレていた。
「私はDTM部の連中以外に素顔を晒して歌う気はねーよ!
ましてや、誰も歌えない応援歌を応援合戦にて歌うわけないだろ!
せっかく寡黙キャラ築いてクラスではしゃべらなくても許される温い環境なのに、それを壊す道理はないだろ!
夜陣のばーか」
レーレにキレられても夜陣は全く動じない。
「はい、録音したー、弱みゲッツー」
「何ィ?!
消せ消せぇ!!」
漫才の合間に夜陣はぽつりと言った。
「無理にとは言わん約束だが……
なかなか楽しそうに見えるんだがな。
歌ってるお前は」
レーレはびっくりしたようだった。
「と……にかく!
私は仮面なしでは歌わないからな!」
その後、話し合いで、曲自体はバリバリの応援歌なので、歌い方だけ、皆で協力して歌うことになった。
6人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ルスブ | 作者ホームページ:http://twitter.com/rusbsss
作成日時:2022年9月9日 10時