盗作 ページ19
「夜陣さーん」
「何だ樹」
「聞いてください。オレ、ギターでちょろっと、曲作ってみたんです。ぜひ、尊敬する夜陣さんからアドバイスもらいたいと思って」
「ふむ、聴かせろ。
…………。
なかなかにキャッチーで爽快な印象のあるメロディラインだな。
サビの五度音程とハモる四度のギターも、冴えておる。
少しキーが高いが……低音連打と、もうひとつボーカリストを気付かうような、いらん要素も見え隠れするな。
もしせいかなら、こんなものなくても余裕で歌いこなせるだろう」
樹の顔色が変わった。
「低音連打の他に……もうひとつ、気づかい?」
「はは、渾身の仕掛けがあっさり看破されて、悔しいか?」
「ねぇ、その気使いって一体……」
「それにしても、お前がこんな気使い屋だったとはね」
夜陣はそう言うと、上機嫌で手をひらひらさせながら、去って行ってしまった。
一週間後の昼休み。
放送部からの依頼で昼休みに、オリジナルの曲を流すことになっていたDTM部は、夜陣がいつも通りの自信満々さで書き上げてきた新作をメインに選んだ。
歌うは、せいか。
特別に放送室にマイクと機材をもちこんで、リアルタイムに全校生徒に届けることになっていた。
せいかが、低目のAメロから入り、時に高くもなりながら、全体としてだんだん上がっていく。
サビにさしかかり、せいか特有の澄み渡る高音金管ボイスが響き渡る頃、教室で昼食の焼きそばパンを食べながら放送を聴いていた龍華は、
「やられタ! あの盗作ヤロー!」
と叫ぶと、パンを放り出して放送室へ向かった。
放送室では意気揚々と夜陣が龍華を迎えた。
樹の姿は……ない。
「龍華か!
どうだ、オレの新作!
許可をとって、樹の作曲したデモから着想している!
これはオレの名曲ぞろいの中でも、ナンバーワンに近いな」
「フザケンナ。
お前、そのサビを作ったのは、オ……い……樹だロ!
メロディはともかく、サビがほぼまんま流用じゃねーカ!
それで作曲者を名乗るとは……見下げた根性……」
「いやいや」
夜陣は真顔でピースサインを作った。
「サビは、二度咲く‼」
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作者名:ルスブ | 作者ホームページ:http://twitter.com/rusbsss
作成日時:2022年9月9日 10時