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「えっ……入部したんじゃありません。

体験入部です。

さっきの勝負はもちろん見てましたけど、夜陣さんには決定的に足りないものがある。

悪いけど、正式入部は保留にして、様子を見させてもらいます」

「生意気な、まあいい、ギタリストも、ピアニストも、いずれオレに屈服させてみせる……」

 そう自分に言い聞かせるかのように宣言すると、夜陣は部室をふらりと出ていった。

 とたんに肩の力を抜くレーレ。

同じく肩の力が抜けたせいかは樹に話し掛けた。

「樹くんって言うの?

その靴の色は、一年生ね。さっきの夜陣くんのギターソロ、あなたの演奏録音データだったのね、素晴らしかったわ」

「そりゃ、夜陣さんの作った曲だからね。

オレ本当に夜陣さんのこと尊敬はしてるんだ。

ただ……たまにオレを音楽仲間っていうより道具としか見なしてないような扱いするんだよね。

まさか、気のせいだと思うけど……」

「それ、気のせいなんかじゃないわよ」

「今はっきり、道具と思ってたって、実力を引き出せればいいんだよって言ってたから」

 樹は太い眉をひそめた。

「信じられないな。

あんな情緒豊かな曲を次々に生み出す人がそんな風に他人を切り捨てるなんて……」

翌日の放課後、龍華が自分が一番乗りとばかりにDTM部の部室に行くと、すでに樹がいた。

「誰ダお前、入部希望者かァ?

得意な分野はあるかァ?」

 とりあえず龍華は、樹に話し掛けた。

「はい、樹と言います。

好きなもの、っていうか中毒なのは、コーヒーと女の子!

得意分野は権謀術数を張り巡らせることでーす。

ギタリストは五十手先まで読むのが大事なんですよー」

「ギタ……?

ギタリストかヨ。

ならピアノは五十一手だナ。

ピアノはギターよりわずかに難易度が高いって言われてルし」

「あはー想像通りの負けず嫌いだぁ。

そう、音楽家は負けず嫌いじゃないとね」

「オレは負けたことはねーヨ、昨日も夜陣に勝ったしナ」

「またまたー、心の底では自分を負け犬と認めてるくせに」

「何だト?!」

とげとげ頭のキレキレギタリスト→←何で二人とも負け犬っぽくなってるのよ、男の子って不思議ね。



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設定タグ:青春 , 音楽 , オリジナル   
作品ジャンル:純文学, オリジナル作品
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作者名:ルスブ | 作者ホームページ:http://twitter.com/rusbsss  
作成日時:2022年9月9日 10時

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