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男は自分の容姿が他人に与える感情になどまるで介さないといった様子でたんたんと告げた。

「オレが偶然通りかかって良かったな。

 もうすぐ聞きつけた助けも来るんじゃねーか。

ミスコンでの歌唱は今回は無理だろうが、ミスコンなんてしょせん狭いカテゴリーの話だ。

くだらねー」

「ほんとに、くだらないよ。

だけど、このまま歌唱へ出て行かなかったら、他のファイナリストに負けたことになる」

「は?どうでも、いいだろ」

「どうでもいいことにさえ一生懸命になれなかったら、いつか見つける大切なことになんかゼッタイ一生懸命になれないよ」

「お前……」

 男は整った眉をしかめた。

「歪んだ負けず嫌いだな。

だが、悪くない。しかし立って歌うことはできんぞ。

めちゃくちゃ骨ぐみの組まれたロングドレスだからな」

「ねんざしたことをバレることはできない。運に見放された少女なんて、ごめんなの」

「よし、助ける。助けてやろう。

バレず、かつ勝ちたかったら、オレの言うことを一つ聞け……」

 せいかは屈辱に震えた。

「まさか、ドレスの中に入って支えるなんて!」

 震えながらも平常心を装って歌っていく。

 歌が大サビ前間奏に差し掛かり、せいかは本日二度目の絶望に包まれる。

「最後にスカート取り去る演出があるんだった!」

 スカートの中で男が笑った気配がした。するとスモークがもくもくと焚かれ、せいかの下半身部分が程よく隠された。

その隙に男は離れ、無事スカートを取りされたせいか。

ショートパンツ姿になり、観客が湧く。

歓声の中、せいかはスカートの重みもないため、何とか右足を軸に立ったまま歌い終わることができたのだった。

「グランプリ、つまりミス・青錆高に決定したのは、何と一年!流せいかだーー!」

 順当にグランプリの座を射止めたせいかは壇上からにこやかに手を振る。

囃し立てる観客である生徒たちにキャライメージに合う安全なコメントをする。

「なんにもない私なんかに投票してくれて、本当にありがとうございますっ」

「そしてミスター・青錆高に決定したのは、またまた一年!夜陣疾風(やじんはやて)だーー!」

「お前らの遺伝子、オレの曲で揺らがしてやるよ」

 せいかの後ろから軽快なテノールボイスが響いた。

反射的にせいかが振り返ると立っていたのは先ほどの美形というにはあまりに美しすぎる男だった。

3→←ドレスの中に入って支えるなんて!最後にスカート取り去る演出あるんだった!



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設定タグ:青春 , 音楽 , オリジナル   
作品ジャンル:純文学, オリジナル作品
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作者名:ルスブ | 作者ホームページ:http://twitter.com/rusbsss  
作成日時:2022年9月9日 10時

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