夜陣が龍華に世界史テスト対策を伝授? ページ40
「まだ歌詞のついていない新曲のデモとか持っているか?」
「持ってるが……今お前に渡せばいいのか?」
「そうだ」
夜陣は不審そうな目を向ける龍華からデモ音源を受け取ると、一周聴き、二周目にサラサラとペンで歌詞らしきものを付けた。
「せいか、歌ってくれ」
歌詞が書かれた紙を受け取ったせいかは驚いた様子だ。
「さすがにいきなりは歌えんか?」
「大丈夫よ、ちょっとびっくりしただけ」
せいかは淀みなく歌い出した。
「シュメールアッカドウルバビアム〜。
ヒッタカミタンニアラフェニヘ〜」
樹が突っ込んだ。
「魔術の儀式ですか?」
龍華はぽかんとしている。
せいかは少し恥ずかしそうだ。
唯一夜陣の他になるほど!
といった顔をしていたレーレが解説しだした。
「これはおそらく世界史の今回の範囲である古代エジプト王朝の変遷を表している。
シュメール王国、アッカド王国、ウル第三王朝、バビロニア成立、アムール人の建国。
ヒッタイト強襲、ミタンニ王国、フェニキア成立までを一節に強引に落とし込んだわけだ」
「ええー夜陣くんもう今回の世界史の範囲完璧なの?!」
「今回の範囲というか、オレは世界史検定準一級だが」
「さすが夜陣さんですね!
オレは一年なんで、範囲違くて気付けませんでした!」
「どうだ、龍華よ。
自分で作った曲の歌詞としてなら、すぐ覚えられるだろ?」
「よくもオレの曲にへんちくりんな歌詞を乗せてくれたな……」
夜陣はむ? という顔をした。
龍華はにかっと笑った。
そして言った。
「何て、もんくは言うものかよ!
感謝するぜ、夜陣」
夜陣も笑った。
そして試験当日。
「くれぐれも、本番中に歌い出すんじゃないぞ。
また揚げ足取られるぞ」
「分かってンよ」
初めの教科の問題が配られ、チャイムで一斉にスタートする。
生徒たちは皆驚いた。
いつもの定期考査を基本とするなら、応用といえる問題ばかりだったからだ。
ほとんどの生徒が混乱する中、DTM部の面々は冷静だった。
だが、心配だったせいかは休み時間にすぐ龍華のクラスを訪ねた。
「どうだった? 龍華くん」
「端的に言ってできタ。
夜陣がもしものこともある、って言って教科書外の応用的な事項まで歌詞に落とし込んだおかげだナ」
「よかった!」
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作者名:ルスブ | 作者ホームページ:http://twitter.com/rusbsss
作成日時:2022年9月9日 10時