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「花柄だああ――!」
「そこに本当の花はあったんだァ――!」
今日一番の大喝采が起きた。
顔をひくひく引き攣らせるせいか。
「龍華くんの考えてくれたコーデなんだから、怒っちゃだめよ、私……!」
ステージが無事終了し、五人は再び合流した。
ほくほくした顔の樹が告げた。
「一番拍手が大きかったのは、せいかさんのめくれた瞬間でした!
つまり勝ちはせいかさんアンド龍華さんペアです!」
レーレが言った。
「まあ、何だ、勝ったからいいじゃねーか、せいかりんよ、そう落ち込むな」
龍華は言った。
「こんなの勝ちとは呼べない……!
曲も関係ねーし!
悪いせいか!」
せいかはうなだれながらも微笑んだ。
「ううん、仕方ないよ、モデルがS級だから似合うのは当然とはいえ、コーデ、良かったと思うな!
それに、後ろにいた龍華くんと夜陣くんには見えてなかったし。
樹くんには見えてただろうけど……。
コーデしてくれて、ありがとう……」
やや落ち込み気味に返事するせいか。
すかさず失笑する夜陣。
「どこがS級だよ。
せいかはS級モンスターか?」
「何ですって?!
ちょっと本音漏らすとすぐけなされるー!」
だが、夜陣からのさらなる罵倒は来ない。
夜陣は負けたことではっきり落ち込んでいた。
「騒ぐな。
そよ風と説明を受けていたが、強風の可能性ワンチャンでせいかの下着の切符を切って勝ちに来たか……。
龍華のやつがここまでしたたかだったとは……。
オレは甘かった」
完全に負け犬モードである。
そこへ話しかけてきた男がいた。
「夜陣くん!」
「む?
お前は、使えないスタッフ……」
「使えない?
と、ともかく、キミたちのおかげでステージは大成功だ!
オレたちも首の皮繋がったぜ!
それに……一生懸命作った花のモチーフも上手く活かしてくれた。
サンキューな。
オレはプロデューサーの雪道。
高校の部活に留まりたくないと思って、それで名を上げる過程でもし挫折するようなことがあれば、遠慮なく連絡してこいよ」
そう言って、雪道というスタッフは連絡先の書かれた名刺を差し出した。
夜陣は慌てて自信満々の顔を取り繕った。
「フ……こちらもいい経験になった。名刺、頂戴しておくぜ」
いい雰囲気で、この日の神奈川探索は幕を閉じた。
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作者名:ルスブ | 作者ホームページ:http://twitter.com/rusbsss
作成日時:2022年9月9日 10時