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おれの隣に座るくるみちゃんが
いきなりもたれかかるからドキッとした。
そ〜っと、顔を右に向けると
すやすや寝息を立てる彼女。
「くるみちゃん?」
何度も名前を呼んで揺さぶったけど起きない。
ほっぺたがすげぇ赤く染まってて、
お酒弱かったんだ..とようやく気づいた。
相変わらず盛り上がってるおじさんたちに
ひとこと挨拶してから、
くるみちゃんを支えて店の外に出る。
「どう?歩けそ?」
「ん..へいき..」
うーん、ぜんぜん平気じゃないっぽい。
でもタクシー乗れるほどお金持ってないし..
「くるみちゃん、乗って」
おれはくるみちゃんの前にしゃがんで
背中に乗るように促した。
「わたしひとりでかえれるよ..?」
こんな状況でも呂律の回らない口で遠慮する彼女。
「おれが心配なの!いいから!」
「..ありがとげんたくん」
ふわふわ笑うくるみちゃんに思わずキュンとしながら
背中に乗せて立ち上がった。
好きな女の子は、
思ってたよりずっと華奢で軽くて柔らかくて
とても愛おしく感じる。
5分ほど歩いた頃、立ち止まって後ろを見ると
おれの背中でぐっすり眠っていた。
「..好きだよ、くるみちゃん」
改めて口に出すとシンプルで切なく聞こえる。
伏せた睫毛が、白い肌が、唇が、
こんなに好きなのにおれのものじゃない。
そんなことを考えてたら
どうしようもなく触れたくなった。
頭ん中でだめだ、だめだ、と忘れようとしたのに
くるみちゃんがタイミングよく首をコテっと傾けて
顔をこっちに向けるから..
あ、と気づいた頃にはもう遅くて
おれはくるみちゃんの唇にキスをしていた。
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作者名:生活 | 作成日時:2021年2月24日 12時