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荒北靖友の課題を手伝って寮に帰る帰り道。
自転車部の方を見ると尽八さんが偶然休憩をしていた。
A「尽八さ…!」
声をかけようとしたが急いで木陰に隠れた。
あかり「今度のレース絶対応援行くからね!頑張って!」
東堂「あぁ。あかりが来てくれると余計に頑張れる気がする。」
尽八さんは葛西さんの頭を撫でる。
あかりさんを見る尽八さんの目は優しくて愛おしそうで、私は涙が溢れてしまった。
口を精一杯押さえて声を押し殺す。
荒北「あれ?Aちゃん帰ったんじゃ…。泣いてんのか?」
どうしてこの男はいつもタイミングが悪いんだろう。
A「泣いてません。」
急いで目を擦り涙を拭っていつもの表情に戻す。
荒北「バァカチャンだなぁ。お前〜。」
荒北靖友は一歩一歩私に近づいてくる。
目の前に立ったと思ったら片方の手を私の肩に置き、もう片方の手で私の頬をなぞる。
荒北「自分で涙拭ってんじゃねぇよ。目の前に男がいるんだからそいつに拭わせろ。」
A「!!!」
声が出ない。
だけど嫌ではない…。
A「私…。」
荒北「…。いいよ。話さなくて。」
溢れてくる涙を荒北靖友は親指で拭う。
しばらくすると落ち着いて荒北靖友も私から離れた。
荒北「あ〜?なんだぁ…。あれだ!目の前に男がいるんだからそいつに拭わせろって言ったけど誰にでもってわけじゃねぇぞ!?男はみんな野獣だから警戒しろ!!」
A「何言ってるんですか?矛盾してますよ?」
荒北「あー!!!っせーな!俺だったからいいけど他の男だったら危なかったぞお前!!」
ガシガシと自分の頭をかいている。
そして何故私は怒られているのだろう。
A「何が危なかったんですか?私、目の前に野獣がいたら自分の涙をその野獣に拭ってもらいます。」
荒北「…え。」
意味深な事を言った。
そもそも野獣なんて中々いない。
私の目の前にしか。
A「荒北さん、ベプシ奢ってください。」
荒北「いや、待て今のどういう意味だ。」
A「早く。」
荒北「あー!!!もう!!!ホント訳わかんねぇ!!!」
自販機の方に向かって歩く荒北靖友を見て笑みがこぼれる。
さっきまで泣いていたのに。
自分でも訳が分からない。
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作者名:るる | 作成日時:2021年9月27日 23時