その夜 ページ10
彼は、何度も店に来てくれた
ぱったり来なくなったと思ったら
しばらく間をあけることもあった
「仕事で海外にいた」と言って、
たまに珍しいお菓子をくれた
「頂けません」と断っても「いつものお礼」と言って聞いてくれなかった
私からしたらこちらがお礼を言いたいのに…
彼はお得意様なのだから
そして彼はあれ以降、二階へ上がることはなかった
当たり前なのだけれど
.
.
その日は珍しく昼間に来た
いつも閉店ぎりぎりの頃に来るのに
そして何だか、元気がなかった
「あの……リボンかけてくれるかな」
珍しく彼がそんなことを言う
「かしこまりました」
鮮やかなブルーのリボンをかけると、
じっと彼がその様子を見ていることに気づく
「贈り物ですか」
「…うん」
「素敵ですね」
「え？」
「男性がチョコを送るのは大抵が女性への贈り物です。お客様から贈られる女性は幸せですね」
「…そうかなぁ」
「ええ…お客様の幸せのお力になれれば私も嬉しいです」
「はは」
「…とびきり美味しいものは、大事な人と食べたいですよね」
「…え？」
「昔、そう言っていた人がいて…私も、その言葉を想いながらこの店を始めました…その人が大事な人と食べたいと思ってもらえるようなチョコを作りたいと」
「…」
「…すみません…余計な話を…」
「いや…素敵な言葉だね」
「……お待たせしました、どうぞ」
「ありがとう」
「いつもありがとうございます」
「…また、来ます」
「はい、お待ちしております」
他のお客様と入れ違いで出て行った彼
その表情はやはり固い気がして、
午後はなんだか、心配してる自分がいた
何故か分からないけれど、
「お客様、頑張って」
と心の中で応援した
.
.
.
その夜の閉店間際、
今夜はもう誰も来ないだろうと閉店作業を始めた頃だった
「…もう、閉めちゃう？」
彼がやって来た
返事をする前に彼は椅子に座ってしまって
あの日のようにテーブルに突っ伏して
ぷらんと下がった片手には…
「…コーヒー、淹れましょうか？」
「ううん…」
「お水でも？」
「…うん」
どうしてこの人は、
飲めもしないだろうお酒ばかり飲むのか
「チョコ…」
「え？」
「チョコ、ごめん…」
「包んでくれたのに」って、小さな声がくぐもって聞こえたので
聞こえないふりをして、水を取りに行った
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ルル(プロフ) - はなさん» 見ていただけて嬉しいです！こちらこそありがとうございます！！ (2022年4月13日 2時) (
レス) id: 9ec4afd1ba (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 期待してのぞいたら更新されていて(；A；)嬉しいです！ありがとうございます！ (2022年4月13日 0時) (レス) @page34 id: 3f48990b69 (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - saya_＊さん» あんにょん、お久しぶりです＾＾おかげさまでなんとか続けています！こちらもちょこちょこと書いていきますのでよろしくお願いします＾＾！ (2019年11月10日 23時) (レス) id: 5e07b07294 (このIDを非表示/違反報告)
saya_＊(プロフ) - ルルさんあんにょん！お久しぶりです^^お元気ですか？新作ありがとうございます(*^^*)やっぱりドンヘだった！(ハート)ルルさんの優しい柔らかい雰囲気のお話大好きです♪続きもたのしみにしてますね^^ (2019年11月9日 6時) (レス) id: 2aa5de40a8 (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - manmaruuさん» こんにちは！嬉しいコメントをありがとうございます！！こちらもそろそろ更新しますね＾＾これからもよろしくお願いしますー！ (2019年11月5日 10時) (レス) id: 84ad280061 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ルル
| 作成日時：2019年10月26日 14時
