その手を取って ページ1
またいつもと同じ一日が始まって
そしてもうすぐ終わろうとしてる
閉店前に入ってきたお客様の対応を終えて
売れ行きを確認して
出したままのホットチョコレートの看板をしまおうと店の外に向かう
夜の匂いに初夏の匂いが段々と交じるようになってきた
店の外から見えるカウンターには、あの可愛らしい花はもう無くて
早いうちにドライフラワーにでもしたらよかったなと少し悔やんだけど
いつまでもあのいきいきした可愛らしい春を見ていたかったから…
いつもと同じ一日
それが少し物足りなく感じる理由にも気付いている
ポケットから携帯を取り出して、
少し迷って…
それからメッセージを打った
「A…？」
「！」
急に名前を呼ばれて驚いて振り返る
「マル…」
「お店…そっか、そうだよね…この時間だし…」
「あ…」
「先に連絡するんだった…急いで来たんだけど、その、急な仕事が…それも押しちゃって…えっと…その…」
「…」
困った顔をした彼は、
みるみる小さくなっていくようで、それから、
「ごめ、」
「入って」
「え…」
「VIPなんだから、閉店時間なんて思いのままでしょ(笑)？」
急いできてくれた、
忙しい中でもここに来たいと思ってくれたのが分かるから
それだけで嬉しいのに、ごめん、なんて言わせたくなくて、冗談を言って笑ってみる
看板を閉まって、札をCLOSEに掛けかえる
扉を抑えたまま振り返ると
マルは外に立ったまま…先程から一歩も動かない
「どうしたの？」
「…迷惑じゃない？」
「なに(笑) 今までだって開店前も閉店後も来てたでしょう？」
「嫌じゃない？A、俺…」
いつもの明るい彼ではなくて
何故か、泣いてしまうんじゃないかとさえ思った
…彼と、初めて会った日の夜を思い出す
「マル」
「うん…」
「おつかれさま」
「…」
「大丈夫だから、早く入ろう」
泣いている子どもに話しかけるように出来るだけ優しく、
そして、
彼のその手を取って
自分の方へ少し引き寄せた
そのまま一緒に店に入って、そっと扉を閉めた
「来てくれてありがとう」
「…」
「そっか、だからキュヒョンさん、ああ言ったんだ…」
「俺も…」
「うん？」
「俺のほうが先に食べる…期間限定のチェリー入り…」
「(笑)」
一瞬、きゅっと握り返された手が
そっと離れていく
目を見つめると、いつもみたいに優しく笑うマルになった
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ルル(プロフ) - ららさん» コメントありがとうございます！何度も読んで頂きありがとうございます、いつもお待たせしてすみません…引き続き楽しんで頂けるよう頑張ります！ (1月25日 8時) (
レス) id: 9ec4afd1ba (このIDを非表示/違反報告)
らら(プロフ) - 更新楽しみにしていました。大好きなお話で何度も読み返して待っていたので嬉しいです。これからも応援しています(՞ ܸ.ˬ.ܸ՞)” (1月25日 6時) (レス) @page16 id: 332aac4396 (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - 夏海さん» コメントありがとうございます、私も書いてて好きなお話なので嬉しいです！ゆっくり更新ですが引き続き楽しんでもらえたら嬉しいです！ (1月23日 23時) (レス) id: 9ec4afd1ba (このIDを非表示/違反報告)
夏海(プロフ) - 更新ありがとうございます！このお話がとても好きで次のお話を待っていたのでとても嬉しいです(*^^*) (1月23日 23時) (レス) id: 774860b99b (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - ちぇりーさん» コメントありがとうございますTT待っていただけて楽しんで頂けて感謝感謝ですTT (11月19日 23時) (レス) id: 9ec4afd1ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ルル
| 作成日時：2022年6月10日 13時
