新しい記憶 - ren ページ8
-his side-
「これ分かる奴ー、いないのか？」
「じゃあ今日は2月13日だから、2+1+3で6番！」
『げ、私だ...』
『まず因数分解するでしょ、だから、えーっと...』
『分かんない！』
君の言葉でクラス全員が笑う。
物理的にも雰囲気的にもクラスの真ん中にいる君。
僕はそんな君に想いを寄せている。
男子生徒が8割のこの学校には君のことが好きな人は沢山いるんだろな。
君は覚えていないだろうけど、小学3年生まで同じ集合住宅に住んでいた。
君と僕と、同じ所に住んでいた歳の近い3人が一緒になって5人組でよく遊んだ記憶がしっかり残っている。
まあ、建物の劣化で呆気なく取り壊されたんやけどね。
それで君は転校したから、かれこれ6年はなんの繋がりもなかった。
それでも僕は、桜が咲く度にタンスの奥からアルバムを引っ張り出して、最後に一緒に撮った大切な写真を眺めていた。
もう会うことは無いだろうから、綺麗な思い出にしようとしてたのに高校の入学式に君がいた。
クラスも同じで出席番号も近いから、必然的にコミュニケーションを取る機会はある。
僕はその度にドキドキしてるのに、君はなんの躊躇いもなく、ただのクラスメイトとして話しかけてくる。
話しかけてくれるだけ嬉しいけどさ。
昔は"れんれん"だの、"れんざぶろう"だの、ヘンテコなあだ名を数え切れないほど作ってくれたのに。
"れんらくちょう"って呼ばれてたこともあって、｢連絡帳どこだー！｣って走ってきた時は、本気で連絡帳を無くしたのかと思って焦ったこともあったなぁ。
今ではあまりにもあっさり"蓮くん"って呼ぶからちょっと寂しい。
『れんくん〜？』
あれ、Aちゃんの事考えすぎて幻聴聞こえ始めた？
そんなことを考えていたら、右肩が優しく叩かれた。
振り向けば、いつもより三割り増しくらい可愛いAちゃんが立っている。
『れんくん！』
「えっ」
『ふふ、突然ごめんね？』
「どうしたと？」
『あのさ、明日お昼いっしょに食べない？』
「明日...？」
『うん！』
「僕は全然いいけど、」
『じゃあ決まり！』
『約束やけんね！また明日！』
廊下を駆けていく君。
なにか大事な用事でもあるんだろうか？
ていうか、明日一緒に昼ごはん食べるん？
突然なんで？とは思うけど、シンプルにめちゃくちゃ嬉しい。
心の準備しとかんと。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 252人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桜桃 | 作成日時：2023年10月21日 14時
