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玄関に置いてある香水を空間に吹いてみる。
前にAにもらったプレゼントだ。
もうすぐ誕生日だから、って欲しいもの聞かれたとき、俺は君が使ってる香水が欲しいと言った。
久しぶりに嗅ぐ匂いに目頭が熱くなる。
俺は君の匂いが欲しいんじゃなくて、君が欲しいのに。
匂いだけ残して、どっか行ったりしないで。
今日もAの元へ向かう。
あれ？
カーテン越しに声を掛けても返事がない。
カーテンを開けたらAはゆっくりと眠っていた。
寝息はしっかり聞こえるけど、普段なら起きてる時間だから心配になった。
冷えきった君の手を自分の手で包む。
しばらくするとAと目が合った。
「おはよ、体調どう？」
『おはよう』
『大丈夫だよ』
声が掠れてたから水を取ってこようとしたら、いらないと言われた。
いつも以上に優しい顔をしたAがゆっくり口を開けた。
『私ね、景瑚に出会えてほんとによかったって思ってる』
なんで、突然そんなこと言うの？
『出会ってくれてありがとね』
なんで、その台詞言うのはまだ早いよ？
『景瑚がいない生活なんて考えられないかも』
なんで、これからもずっと一緒だよ？
Aの目の深いところまで見れば、この言葉たちが生まれた理由が分かってしまったような気がした。
『景瑚、大好きだよ』
「おれも大好きだよ、愛してる」
『でも_______』
その言葉の続きを知るのは、君からの最初で最後の手紙だった。
♩ ウソツキ / WHITE JAM
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作者名：桜桃 | 作成日時：2023年10月21日 14時
