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「おはよー！」
『おはよ、別に毎日来なくていいのに(笑)』
「えー、Aは俺に会いたくないわけ？」
『そうじゃないけど景瑚だって色々あるでしょ？』
「そんなのAに比べたらどうでもいいし！」
「てかさ、昨日ここ出る前にトイレ行ったんだけど、幽霊いたんだよ！マジで！」
『ウソだ〜(笑)』
「ホントだって！長い髪の女の人！」
やっぱり笑っている君が大好きだ。
仕事終わりだと面会時間に間に合わないから平日は昼休みに、土日は朝から会いに行く。
そんな生活が続いた。
俺は大抵の人が生涯で言わないような、くさい台詞をポンポン言うことができる。
もちろん、好きで好きで堪らないA限定。
それに対していつもAは、少し呆れた口調での"はいはい〜"と、なんだかんだ嬉しそうな笑顔を返してくれる。
昨日までは。
何気ない会話の中で
「Aのこと大好きだから！人生かける準備だいぶ進んでるから！」
と俺は言った。
そしたらAの顔が変わった。
俺の知らない君だった。
悲しさに漬け込まれたような目で薄く笑っていた。
黙り込む君をきつくきつく抱きしめた。
いつものように名前を呼び、カーテンを開けると、すっかり仲良くなったAのご両親がいた。
『外泊許可出たの！』
「マジ？！やったね！」
俺が手を広げると、パチン！と良い音が鳴る。
「1泊？」
『今回は様子見でとりあえず1泊だけど、多分またすぐ許可もらえると思う！』
「そっか！じゃあその時は俺ん家来てよ！」
『うん、そのつもり！』
「これから出発？」
『景瑚に会ってから行こうと思って』
『明日休みでしょ？』
「そうだけど？」
『自分の為に時間使いなよ？』
「うーん、分かった...」
私は大丈夫だからと言わんばかりの伝え方に、ハッキリとした返事ができなかった。
『私は大丈夫だから！そんな気にしないで』
ほらやっぱり。
君が大丈夫って言う時は大丈夫じゃない時。
俺、それぐらい分かってるよ？
あっという間にここを出ないといけない時間になる。
『じゃあ戻るわ！無理しちゃダメだよ？』
「うん」
『失礼しました！』
外泊許可が下りた理由は回復してるからでは無いんだろうなと考える。
この前抱きしめた時も明らかに細くなってたし、さっき手に触れた時も冷たかった。
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作者名：桜桃 | 作成日時：2023年10月21日 14時
