ファーストキスの使い方 - syoya ページ16
-his side-
僕には好きな人がいる。
ｺﾝｺﾝ
「失礼します」
『はーい』
『あ、翔也くん？どこか怪我でもした？』
「昨日突き指しちゃって、ほったらかしにしてたら痛くて」
『えぇ、ちゃんと処置しなきゃ』
『ここどうぞ』
言われた通り、A先生の前に座る。
僕は保健の先生を好きになってしまった。
『指ちょっと触るね』
A先生の白くて綺麗な手に触れられると余計なことを考えてしまう。
今顔赤くなってないかな、、
『テーピングの巻き方知ってる？』
「あ、はい一応。家にテープ無くて昨日は痛くなかったから…」
『そっか、いつでもここ来ていいけど対処は早めにね！』
「わかりました」
半分はホントだけど、もう半分はウソ。
こうやって口実作らなきゃ変に思われちゃうし。
『保冷剤渡しとくね』
「ありがとうございます」
「あの、休み時間終わるまでここに居ていいですか？」
『いいけど… 授業遅れちゃダメだよ？』
「はい！」
あと数分だけどA先生と居られることになって、ついテンションが上がる。
ガキって思われたくないから出来るだけ平然を装う。出来るだけ。
「A先生って転勤とかあるんですか？」
『随分気が早いなぁ。まだ10月だよ笑』
「気になったので…」
『私は無いよ、ここの養護教諭辞める時は転職かな』
「そうなんですか？」
『うん』
残り半分の高校生活、一緒に過ごせるみたいで一安心だ。
頬は自然と緩むし、目線は軽く笑うA先生の綺麗な横顔に奪われてしまう。
『そんなにここ居心地いい？』
「あ、はい。なんかいい匂いするし」
『はは、そっか笑』
ん？今変なこと言ったかも
だって保健室なんてだいたいA先生が1人でいるし、特別変わった匂いがするわけでもないのに。
キモいって思われたら終わりだ…
『そろそろ時間じゃない？』
「ほんとだ。失礼しました」
『はーい、授業頑張ってね』
ふにゃっとした優しい笑顔でそうやって言われたら本当に頑張れてしまうから不思議だ。
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作者名：桜桃 | 作成日時：2023年10月21日 14時
