名前を呼んで - ruki ページ1
-his side-
隣で眠っているこの愛くるしい生き物は俺の彼女。
Aが俺の家に泊まりに来るのはこれで5回目だけど、目が覚めたら隣にAがいるというのはまだ慣れない。
ﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ
聞き慣れないアラームを止める。
今日はお互い休み。
雨も降っている。
歩きにくいだろうし、家でゆっくり過ごすつもり。
何よりあともう少し、愛おしい寝顔を見ていたい。
『んん、るきくん？』
起きちゃったか、笑
「おはよう」
『おはよ、ねむ』
「ゆっくりしてていいよ？」
Aは生まれつき目が見えない。
慣れない場所や空間には人一倍恐怖心があると思う。
だからAが俺のベッドで、こうやってリラックスしている姿を見ると、すごく嬉しくなる。
『起きる、』
「じゃあ手貸して」
『、ん』
寝起きの彼女は5歳くらい幼く見える。
これは本人に言うと拗ねるけど(笑)
「顔洗う？」
『うん』
「ここ右」
『それは覚えてる』
「お湯は左回し」
『それも覚えてる(笑)』
慣れたように俺の部屋を歩く彼女を見て、にやけそうになる。
口角上がってるのバレないといいけど。
洗顔を終えたAがこちらを向く。
「どうした？」
Aの手が俺の頬へと伸びる。
『笑ってなかったかぁ』
「え？」
『瑠姫くんなんか今笑ってるような気がして』
バレてた。
『わ、ほっぺめっちゃ伸びる』
「ちょっと痛い(笑)」
2人で笑い合う。幸せな休日だ。
「朝ごはん食べる？」
『食べる』
「フレンチトースト作ろうかな」
『私も手伝うよ』
Aは俺より遥かに料理上手だから、俺が卵を割ると
『今殻入ったでしょ(笑)』
ってバレる。なんで？
少々手間取りながらも無事完成。
『美味しい！』
いつまでもその笑顔を見せてくれたらいいな。
そんなことを思う。
「時間あるし映画でも付ける？」
『うん！瑠姫くんのおすすめある？』
「映画かぁ、この前友達に見ろって言われたアニメはあるんだけど」
『いいじゃん！それにしようよ！』
ってことでAの隣に腰を落とす。
Aにアニメとかの映像作品は音だけでも面白いってことを教えてもらってからは、よく目を瞑るようになった。
小さな声が聞こえて、目を開けてみると楽しそうに笑っているAが映った。
ずっと俺の隣で笑っていてね。
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作者名：桜桃 | 作成日時：2023年10月21日 14時
