【超超短文】12/24 ページ23
「メリクリ。あげる」
レアカードみたいにキラキラ光るシールのついた黒のキャップを、ばさっと頭に被せられる。
そういえば、ラジオのトークの中でそんな話出たな。
ホントにくれるとは思わなかった。せっかくのプレゼントに申し訳ないけど、正直なところ、ちょっと困る。
「ありがと……でも、ごめん」
「ん？」
「言ったと思うけど、キャップあんま好きじゃなくて……」
「何で？ 似合ってるのに」
「知ってる」
だからなんだけど。
「ガキっぽく見えるからとか？」
わかってんじゃん。
自分の態度の悪さを自覚しつつも、むくれた顔をどうにもできなくて、すっと顔をそむけてしまった。
せっかくくれたものにこんなこと言うのどんだけ失礼かって、ちゃんとわかってます。
前に一度被ってみた時、鏡の中の顔がどーみてもあんまりにも高校生の時の僕で、頭を抱えた記憶が蘇る。髪を伸ばして、大きめのシャツを着て、一生懸命大人らしくなろうと足掻いてるのに、高校生クイズの時から見た目なんにも成長していない自分を思い知らされただけだった。
ただでさえ、ちょっと髪を切るだけで『昔とちっとも変わらないね』を浴びるほど言われるから、もうぶっちゃけ切りたくないくらい。いっそヒッピーみたいなロン毛野郎にでもなってやろうかとすら……思うだけでどうせ実行はできないけど。
「可愛いの、ええと思うけどなあ」
それはねえ、僕が言うのもなんだけど、須貝さんだからだよ。
「そんなに嫌かー？」
そんな困った顔しないでよ。
僕にむかって
『可愛い』
を伝えてくれる人がこの世でひとりだけなら、何も困ったりしないんだよ。
……日本中がおかしな熱に浮かれている日らしい、我ながらキモい発想だわ。
「これ似合う、よね」
「そらもう、間違いなく」
そっか。
「じゃあ、須貝さんといる時に被る」
このキャップを被った僕を褒めてくれるのが、あなただけの時にね。
「それ最高」
見上げる先には、確信に満ちた笑顔。
さて、僕は彼に、どんな実用品をあげたらいいんだろうか。
≪おわり≫
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 81人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しまむら | 作成日時：2021年8月25日 14時
